専門医インタビュー
骨や筋肉にメスを入れるので、手術直後は患部に腫れや痛みを感じることがあります。それでも、患者さんの体に負担の少ない手術手技や麻酔技術が向上していることに加えて、手術中に炎症を抑える薬剤を関節内に注射するといった処置を行うことによって、昔に比べると腫れや痛みはかなり軽減できるようになっており、術後の回復も早まっていると思います。
人工膝関節置換術を受けた後、合併症として細菌感染や人工関節のゆるみ、血栓症などを起こすことがあります。さらに、転倒による骨折や神経・血管損傷にも注意が必要になります。実際にこうしたことが起こる確率はそれほど高くはありませんが、手術を受けたら患者さん自身が気をつけていく必要があります。例えば、合併症を減らすために、手術前からむし歯や歯周病予防のための口腔ケアをしっかり行うとか、転倒での骨折を防ぐために骨粗しょう症の治療を行うとか、肥満のある人は、人工関節への負担を軽くするために体重を減らすことも重要です。なお、内科的な病気の状態によっては、手術が受けられないことがあります。手術を受ける前から持病の治療もしっかり行っておくようにしましょう。関節リウマチの人は、どうしても骨が弱くなっていたり、感染症にかかりやすくなっていたりします。ですから、薬物療法による関節リウマチのコントロールを続け、場合によっては骨粗しょう症の治療も並行して行うことも必要でしょう。ただし、これは関節リウマチの方に限ったことではなく、人工膝関節の手術を受けたら、皆さん同じように心がけていただく必要があります。
患者さん個々の状態によっても違いますが、手術後、概ね6か月も経てば、運動をしても問題ないことが多いと思います。ただし、ジャンプを伴うようなスポーツは、インプラントの破損につながるので避けてください。例えば、プールでの水中ウォーキングや水泳、ゲートボール、サイクリング、ダンス、ボーリング、卓球、ゴルフ、テニスなどは、健康維持もかねてお勧めできます。
この記事は、人工膝関節の手術を迷っている人が見ることが多いと思います。手術に対してこわいというイメージを持っている人も多く、膝の痛みや動きづらさを今もがまんし続けている人も多いでしょう。人工膝関節置換術は、今や比較的安定した成績を期待できる治療法です。単に、今の膝の状態だけで手術をするか、しないかを決めるのではなく、もっと長いスパンで考えてみてもらえればと思います。今後の人生設計の中で、やりたいこと、やらなければならないことを見据えて、今、手術したほうがいいのかどうかを考えることお勧めします。まずは、主治医の先生とよく相談してみてください。
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