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専門医インタビュー

股関節の痛みは生活への支障を感じる前に受診し適切な治療を。

この記事の専門医

城本 雄一郎 先生

埼玉県

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専門分野 股関節外科、人工関節外科
資格 日本整形外科学会認定整形外科専門医

この記事の目次

骨切り術と人工関節置換術では、適応の違いは何ですか?

骨切り術

骨切り術

手術療法としては「骨切り術(こつきりじゅつ)」と「人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)」が代表的です。骨切り術は自分の股関節は残しながら骨の一部を切って関節面の位置関係を調整する手術、人工股関節置換術は傷んだ臼蓋や大腿骨頭を人工の関節に置き換える手術です。寛骨臼形成不全による変形性股関節症の場合、骨切り術か人工股関節置換術かを考えるひとつの目安となるのが患者さんの年齢です。人工関節の寿命は昔に比べて延びており、15~20年は持つとされるものの、それでもあまりに若いうちに人工関節にすると、一生のうちにもう一度入れ替え(再置換(さいちかん))の手術が必要になることがあります。再置換は手術自体が大変になり、リハビリにも時間がかかるため、できれば人工関節の手術は一生に一度とすることが望まれます。そのため、50代ぐらいまでの患者さんでは、まずは骨切り術で対応できるかどうかを考えるのが一般的です。
ただし、どんなに若い人でも軟骨が完全になくなっていたり、骨の変形が進行していると、骨切り術での対応は難しくなります。その場合は、将来的に再置換になる可能性を踏まえた上で人工関節を検討することが多いでしょう。

手術で考えられる合併症とその予防策を教えてください。

前方アプローチ

人工関節の手術で考えられる合併症は主に3つ、「感染」「血栓症」「脱臼」です。感染は、手術中や手術後の傷などから細菌が侵入することで、まれに起きる合併症です。抗生剤を使って傷の管理を徹底したり、患者さん自身にも術後の暮らしで気をつける点を伝えて予防していきます。
血栓症はエコノミークラス症候群としても知られていますが、術中・術後に血流が悪くなり血管内に血栓ができたり、それが肺に流れて詰まってしまうと大変なことにつながります。弾性ストッキングやフットポンプを使った予防が一般的ですが、近年では、手術翌日からリハビリを開始して、なるべく早く動くようにしてもらいますが、これには血栓症を防ぐ狙いもあります。
脱臼は人工関節に特有の合併症ですが、「体のどこから皮膚切開して股関節に達するか」という切開方法(アプローチ)によっても変わってきます。最近増えている前方アプローチは、股関節の前側から入る方法で、日本人の生活様式(正座や和式トイレの利用など)に対しては脱臼しにくいアプローチといえます。また、患者さんに避けるべき脱臼肢位をしっかりと教育することでも、脱臼を予防していきます。

最近、よく聞くMIS(最小侵襲手術)とはどのような手術ですか?

MISは、Minimally Invasive SurgeryとMinimally Incision Surgeryの2つの意味があり、前者が患者さんへの体の侵襲を最小限にするもの、後者が手術の切開をできるだけ小さくするものです。術後患者さんが直接目にするのは傷跡なので、傷はなるべく小さい方が嬉しいという人も多いですが、重要なのはやはり前者です。可能な限り筋肉や腱などの軟部組織(なんぶそしき)を傷つけないように手術することで、術後の回復も早くなります。傷の小ささを優先してしまうと、かえって皮膚やその下の筋肉を傷つけかねません。もちろん大きく切る必要はないですが、適切な大きさで切開し、患者さんにとってトータルで体への負担を抑えていくことが大切です。


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