専門医インタビュー
足底板(インソール)
変形性膝関節症と診断されると、多くの患者さんは保存療法(手術でない方法)から始まります。まだ初期で、軟骨がある程度残っている状態であれば、運動療法と体重の減量が基本になります。その他、鎮痛薬などの服用、足底板(インソール)などの使用、ヒアルロン酸などの関節内注射があります。また最近では、保存療法と手術療法の間を埋めるような治療法として、私たちが生まれながら持っている病気を自然に治癒する力を利用して組織の修復や痛みの改善を目指す細胞治療も普及し始めています。
膝周りの大腿四頭筋(だいたいしとうきん)を鍛えるというのは、膝の健康を維持するための基本です。その前に行ったほうがよいのが、膝のお皿(膝蓋骨(しつがいこつ))の部分のストレッチです。膝の痛みは、膝蓋骨の周りに出やすくなるので、よく動くようにほぐして、柔軟性を高めます。その上で大腿四頭筋の訓練をしていくとよいでしょう。
膝が痛いと、どうしても動かなくなるので、筋力が落ちます。筋力が落ちると膝の痛みはますます強くなり、さらに動かなくなって筋力が落ちるという悪循環に陥ってしまいます。それによって立ったり歩いたりする機能が低下してしまうのが、今問題となっている「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」です。こうした悪循環に陥る前に、普段から筋力を鍛えることを心がけてください。あとは、筋肉の原資となるタンパク質を摂るなど栄養バランスにも合わせて気をつけましょう。
1.お皿の探しかた
2.痛みの探しかた・痛みを和らげるためのストレッチ
3.膝の内側・外側の痛み
4.基本ストレッチ
膝周りのストレッチ
膝関節に水が溜まるのは関節内にある滑膜(かつまく)という組織に炎症が起きているからです。そのため、炎症に対する治療を行わないと、水を抜いてもまた炎症が起こって水が溜まるといった状態が繰り返されてしまいます。また水が溜まっている状態を放置していると軟骨の破壊につながっていくので、早い段階で治療が必要です。
さまざまな治療法を試みたけれども痛みが改善されない場合や軟骨がすり減ってしまって関節に隙間がみられず痛みが強い場合には手術療法が選択肢に入ってきます。
骨切り術をした膝関節
手術療法は、「骨切り術」と「人工膝関節置換術(じんこうひざかんせつちかんじゅつ)」の大きく2つあります。骨切り術では、膝関節になるべく均等に荷重がかかるように骨の一部を切ってプレートやボルトで固定し脚の形を矯正します。ご自身の関節が温存されるため、活動性の高い方に向いているとされています。ただし、患者さんの年齢や活動性、関節の可動域(動く範囲)、関節を曲げ伸ばしできる角度など、適応条件がいくつかあります。また、骨がしっかり癒合(ゆごう)する必要があるため、機能の回復までに時間がかかることがあります。
人工膝関節を入れた膝関節
変形も痛みも強く、膝の曲げ伸ばしが少ししかできないなど日常生活の質がかなり落ちているような場合は、人工膝関節置換術のほうが向いています。人工膝関節置換術というのは、例えるなら虫歯の治療のようなものです。膝関節の傷んでいるところを削って、人工膝関節を入れます。悪いところを人工物に置換するので、変形が強いとか、膝の曲げ伸ばしが難しいというような状態が悪い場合にも選択できるのが特徴です。ただし心臓や腎臓などに重い持病があったり、糖尿病だったりすると手術が受けられない場合もありますので医師によく確認するようにしましょう。金属アレルギーの方に関してはあらかじめ検査で確認してから行い、検査結果によっては人工膝関節の材質を変えて対応することもあります。
人工膝関節置換術を受けるのかを決めるにあたり、ご自身の意思というのはとても大切です。なぜなら人工膝関節置換術は、手術を受けて終わりではなく、その後のリハビリも重要だからです。患者さんご自身がこの膝の痛みを何とかしたいというように、前向きに治療に取り組む気持ちがないと、思っていたような治療効果が得られないこともあります。とはいえ、手術と聞くと怖いイメージがあり、なかなか決断が難しいと思います。
治療の進めかたで悩まれている患者さんに、「10年後、20年後どのように生活ができているか想像してみてください」とお伝えすることがあります。今後の生活について向き合ってみることで、ご自身の希望や目標が鮮明になると思います。それをご家族や親しい方、医師にでも良いので話してみてください。相談することで、ご自身の手術への気持ちが固まる場合もありますし、手術とならない場合でも次の治療へのヒントが隠れているかもしれません。ご自身が納得して治療を進めることが何よりも大切です。
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