専門医インタビュー
大阪府
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人工股関節置換術の流れ
大きく分けると、保存療法と手術療法の2つがあります。痛みの少ない前期や初期の段階なら、まず股関節にかかる負担を減らすために減量に取り組み、ストレッチや筋肉トレーニングなどの運動療法を中心に症状の改善を図ります。必要に応じて、痛みを緩和する内用薬や外用薬も使います。股関節内の痛みのある場所を狙って、直接ステロイド注射をする場合もあります。保存療法だけでは痛みが改善しない場合、手術療法を検討します。現在、手術は「人工股関節置換術」が中心です。この手術は、傷んだ軟骨部分をすべて取り除き、金属やセラミックの人工関節に置き換える手術で、年間6万人以上が受けています。人工股関節は、1970年代にほぼ現在のような形のモデルが完成し、年々、人工関節も手術方法も進化しています。その他の手術方法としては、骨盤の一部である臼蓋を切り、全体を下にずらすことで大腿骨のかぶりを深くする「骨切り術」という手術があります。ただし、リハビリが長期化することや、神経麻痺や骨融合不全といった合併症のリスクもあり、人工股関節置換術を選択される方もいます。
患者さん本人の意思を尊重しながら、痛みの強さ、生活状況、仕事の状況などによって総合的に判断します。手術に踏み切るには勇気がいると思いますが、ギリギリまで痛みを我慢しながら生活し続けることは、先ほども申し上げたように骨量や筋力低下のリスクを考えるとお勧めできません。やはり、日常的に杖が必要になる前に手術を検討した方がいいのではないでしょうか。以前は、人工関節の耐用年数を考え60歳以下の人にはあまり積極的に行われていませんでした。しかし、現在では人工関節だけでなく手術方法もめざましく進化しており、耐用年数も向上しています。また、入れ替えが必要になった場合でも、以前より入れ替え手術もスムーズに行われるようになっており、高齢者だけでなく若年者に対しても行われ適応年齢の幅が広がっています。
股関節は複雑な立体構造で、形状や変形度合いも人それぞれです。また、術後の脱臼を防ぎ、長く快適に人工関節を使える状態にするためには、できるだけ筋肉を切らない方法で股関節に侵入し、一人ひとりの股関節にぴったり合った、正しい位置に人工関節を埋め込むことが大切です。手術の際にどこから侵入するかは、大きく分けると大腿骨の後ろから侵入する「後方アプローチ」、横から侵入する「側方アプローチ」、前から侵入する「前方アプローチ」の3種があります。それぞれのアプローチで特徴がありますが、「前方アプローチ」を行うことで、筋肉が温存しやすく神経の損傷も少ないため、脱臼発生率の軽減や術後のスムーズな回復が見込めます。手術前までにMRIやCTのデータと3Dプリンターを組み合わせれば、患者さん一人ひとりの股関節の実物大の精密な立体模型が作成できます。これを使って、術前にさまざまな角度から手術の方法を検討できるようになりました。また、コンピューター上の三次元モデルを使えば、手術後の股関節の動きも正確にシミュレーションすることができます。こうして患者さんそれぞれに綿密な術前計画を立てることで、ミリ単位の正確さで手術ができるようになっているのです。テクノロジーの進化により、患者さんごとの状態に合わせたオーダーメイド手術が可能になっています。
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