専門医インタビュー
骨切り術
人工股関節の一例
本田 臼蓋形成不全が重度の場合、中学生、高校生くらいから痛みが強いことがあります。例えば、普通にしていると痛くはないけれど、体育の授業や部活動などの運動をすると痛みが強いという若い人の場合は、骨切り術によって骨盤を矯正したほうが、将来の変形性股関節症の予防につながることがあります。
一方、高齢者の変形性股関節症の場合は、大まかな目安として、股関節痛のために500メートル歩けないとか、手すりにつかまりながら一段ずつしか階段の登り降りができないとか、買い物や家事が思うようにできないといった状態だと、人工股関節の手術を考えるタイミングだと思います。
山田 とはいえ、「手術」と聞くと怖いイメージがあり、なかなか決断できない人もいるかもしれませんね。その場合は周りにいらっしゃる人工股関節の手術を受けた人に話を聞いてみたり、信頼しているかかりつけの医師に相談して人工股関節のことを知ることも良いかと思います。人工股関節の手術は治療の最終手段なので、決断が遅れたからといって手遅れになることはほとんどありません。全身状態が悪くなければ高齢でも受けられる手術ですので、よく考えて、患者さん自身が決めることが大切だと思います。
人工股関節置換術後のレントゲン
本田 そうですね。手術は、人工股関節の耐用年数などを勘案すると年齢的に早すぎるということはあっても、高齢だから受けられないという手術ではありません。ただし、股関節の痛みによって歩けなくなり、筋力が落ちすぎてしまってから手術を受けると、リハビリに少し時間がかかるというデメリットがあるということは、知っておいたほうがいいでしょう。
本田 人工股関節置換術は、股関節を人工物に入れ替える手術です。手術方式がいくつかある中で、股関節の前方から人工股関節を設置する手術方式があります。人工股関節は、正しい位置に設置しないと脱臼しやすいとか、長持ちしづらいといった弊害が出てきます。前方から設置する方法だと、人工股関節を適切な位置・角度で設置することができます。さらに、重要な筋肉を切離せずにすむため、術後の回復が早いことに加えて、人工股関節が脱臼するリスクが少ないとも言われています。
山田 ただし全員に前方から手術ができるわけではありません。例えば、高度の肥満の人、股関節の伸展方向の動きが制限されている人などは、前方アプローチは不向きだと思います。手術方式を決める一番の目的は、人工股関節を正しく設置することです。患者さんそれぞれに合った手術方式を選択することが大切だと考えています。
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