専門医インタビュー
全置換術、片側置換術いずれの場合も、術後のリハビリの開始時期や内容は変わりません。手術翌日から、立つ、歩く練習を始めることが多く、一週間もすると杖を使って歩けるようになる方がほとんどです。それは両側同時に人工膝関節の手術をした場合も同様です。リハビリを3週間くらい行うと傷の痛みは多少あっても、手術前に体重をかけたときに感じていたズキンとするような痛みは楽になります。自宅に戻って生活できる自信がつくまでリハビリを進めます。個人差、体力差はもちろんあるものの、強い意欲がある方ほど術後の回復は早い印象がありますね。
患者さんの中には、たくさん歩いたりすると、人工膝関節が早く傷んでしまうから動かないほうがよいと思い込んでいる方がいます。ですが、そうではなく、むしろ歩いたほうが、人工膝関節が長持ちする可能性があります。もちろん、日常的な正座や、衝撃がかかるような運動は人工膝関節の摩耗や破損につながるので避けていただく必要があります。それ以外は、大事にしすぎないことのほうが大事なんです。
人工膝関節にしたらお勧めなのが、毎日3~5kmのウォーキングです。ただし、ダラダラ歩いても意味がないので、歩きやすい服装でスポーツシューズを履き、両腕をしっかり振れるように、ある程度歩幅を大きく取りながら歩くことが大切です。こうして歩くことで膝周囲の筋力がつき、体重も少し減れば、人工膝関節への負担が減って耐久性が上がる可能性もあります。しかも、日常的に“歩く”という有酸素運動を続けることで、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の改善や予防にもつながると思います。
もちろん患者さんごとに個人差はあるものの、私の経験では、手術後3~4か月もすると歩く行程が多い旅行もできるようになる方が多いという印象があります。手術前は、他の人と同じペースで歩けないからという理由で旅行を断っていたのが、階段を昇ったり1kmくらい歩いたりしなければいけない旅行にも参加できたと報告してくれる方や海外旅行に行けたという方もいます。患者さんを見ていても、気持ちが前向きになり、楽しんで生活されている印象がありますね。
膝の痛みを抱えている方はたくさんいらっしゃいますが、適切な治療法はそれぞれ違います。人工膝関節も、あくまでも多くの治療法の中の選択肢の一つです。いくつかの選択肢の中で、自分の状態に合った治療を受けるには、まずは、整形外科で適切な診断を受けることが重要です。特に、2~3か月保存療法を受けても痛みが改善しない場合は、MRI検査も含めて、多角的な観点から診察ができる医療機関へ受診してみるのもよいでしょう。
ぜひいくつになっても、ご自分の足で歩いて、楽しい生活を送っていただきたいと思います。
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