専門医インタビュー
神奈川県
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通常、手術翌日から理学療法士のサポートのもと、歩行のリハビリを始めます。骨盤と大腿骨をつなぐ人工股関節は固定されているわけではなく、本人の筋力だけで安定させることになります。退院後の暮らしで脱臼を防ぐためにも、適切なリハビリで正しく筋肉をつけていくことは非常に重要です。
退院の目安となるのは、100m程度の歩行が安定すること、T字杖一本で階段昇降がしっかりできること。それができればあとは病院内ですべきことは少なく、むしろ自宅に戻り、普段の生活を送ることが大切なリハビリになります。
退院までの目安は10日~2週間程度ですが、最近では高齢でも人工股関節置換術を受ける人が増えていることから、2週間ではそこまでリハビリが進まないケースもあります。そうした場合は、近隣のリハビリ専門施設への転院をご紹介しており、そこでもう少し時間をかけてリハビリを行い、自信をつけてから自宅に戻るようにしてもらっています。
日常生活で人工股関節が外れることはまずありませんが、過度の動きをすると脱臼のリスクがあります。股関節の周りの筋肉が安定してくるまでには半年程度を要するため、その間は特に注意が必要です。脚を曲げてしゃがんだり、脚組などで膝が内側に入るような内転・内旋の動きは避けるようにします。リハビリではどんな体勢に問題があるかもしっかり指導しているので、普段の生活でも気を配ってほしいと思います。
スポーツに関しては、サッカーやラグビーなどの激しいコンタクトスポーツ以外は、常識の範囲内なら特に制限はありません。ただし、後になって大腿部が痛んだり、股関節に違和感が出るような活動は避けていただくようにしています。何がよくて何がいけないかは個人差も大きいので、ご自身で十分に様子を見ながらコントロールしてください。
また、高齢になり骨粗しょう症を患うなど、骨がもろくなることで人工股関節にも影響が出る可能性があります。骨狙しょう症は特に女性に多い病気です。定期的に骨密度をチェックし、普段の生活でも予防に心がけましょう。
変形性股関節症では、股関節の異変に気づいても悪化するまで放置してしまうケースが少なくありません。60歳以上の患者さんでは、初めて診断を受けた時点で、8割の方が進行期・末期であったという統計が出ています。早い段階で治療を開始するほど、軟骨をより長く温存していける対策が取れます。痛みが耐えられなくなってから受診するのではなく、痛みに気づいた段階での受診するのが一番です。また、ずっと腰痛に悩まされていた方が、実は腰ではなく股関節に問題があったというケースもあります。気になる方は専門医への相談をお勧めします。
人工股関節置換術については、術後の患者さんから「長く我慢してきたけれど、もっと早く受ければよかった」という声が多く寄せられる、満足度の高い手術です。長所・短所それぞれをしっかり理解した上で受けるのであれば、生活の質向上のための手段として良いでしょう。手術を受けた後は最低でも年1回のペースでレントゲン撮影を行い、人工関節がきちんと機能していること確認し続けるのが大切です。主治医とは一生のお付き合いになりますので、ご自身が信頼でき、何でも相談できる医師を見つけていただきたいと思います。
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