専門医インタビュー
変形性股関節症の手術は、骨切り術と人工股関節置換術と大きく2つの方法があります。骨切り術は、患者さん自身の骨を切って状態を改善する方法で、それほど変形が進んでおらず、ある程度骨がしっかりしている比較的若い人に向いている手術療法です。骨切り術は適応となる方に手術をすれば成績は良いです。
一方人工関節は時間の経過とともに『ゆるみ』が生じることがあり、以前は20年で6割くらいの人に再置換術手術が必要になっていた時代もありました。よって骨きり術の適応でない若い患者さんはある程度の年齢に達するまで、痛みに耐え、活動の制限を余儀なくされていました。
こういった制限は、仕事、子育てなどしている方には大きな負担となります。
しかし今は人工関節の技術革新により、手術後、20-30年以上の耐久性が期待されています。万が一再手術となっても、再手術の技術も飛躍的に発展しています。今は骨きり術適応外である若い患者さんも人工関節を行うことにより、仕事、子育て、レクリエーションなどを制限なくできる時代になっていると思います。
人工股関節置換術後のレントゲン
それは、考え方次第だと思います。例えば、まだ50代だからといって手術をためらい、長い間ずっと痛みをがまんして、好きな旅行にも行けなかった人がいました。
結局、人工股関節置換術を受け歩けるようになり、旅行にも行けるようになった人がいたのですが、「もっと早く(人工股関節の手術を)受けておけばよかった。我慢した時間がもったいなかった。」とおっしゃっていました。そのような患者さんを目の当たりにすると、40代、50代でも思いきって人工股関節にし、万が一、人工股関節の再手術をしたとしても、好きなことをやり続けていただいたくことができるのではないかと思います。
しかし考え方は人それぞれですから、手術をするしない含めて、手術のタイミングなど主治医の先生とよく相談をして決めるのがいいと思います。
当院では、最近は、80代で人工股関節の手術を受ける患者さんが増えてきており、寝返りをすると股関節が痛くて眠れないなど現在の状態が辛ければ90歳を超えた患者さんに対しても人工股関節置換術を行っています。以前と比べ手術中の出血量が減っており、そのため手術中の輸血の機会が減っています。80歳以上の人には事前にご自身の血液を貯血頂いておらず、また80歳以下の人についても、手術方法に応じ自己貯血頂いています。ただし、手術ですので、リスクはあります。手術した傷口からの雑菌の感染リスクや、手術中に骨を傷つけてしまうこと、血栓のリスクもあります。さらに、人体の骨の中で最も出血しやすい骨盤と次に出血しやすい大腿骨を操作するので、出血のリスクもあります。もちろん、感染症対策や血栓予防の対策は万全に取り、出血については患者さんに応じて手術前に患者さん自身の血液を採取してから手術に臨みます。このようにリスクもあることから、私の場合、手術を検討している患者様は、患者さんのご家族にも同席していただき、人工股関節置換術のメリット・デメリットを十分にお話しをさせて頂きます。その上で医療者を含めみんなで治療方針を決めさせていただいています。
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