専門医インタビュー
手術した脚をかばうのではなく、できる限り痛みがなかった頃の生活をしてくださいとアドバイスしています。股関節が悪い患者さんは、長年にわたって患部をかばい、負担をかけないように生活してきた人が多いので、手術後もついかばってしまいがちです。しかし、せっかく手術をして痛みがなくなったのにかばってしまうと、膝や腰といった他の部位に悪影響を及ぼしかねません。生活の中で股関節をしっかりと使っていくことが大切です。そのためには、筋力をつけることも大事になります。手術後の動作制限は設けていませんので、水泳、ゴルフ、ダンス、登山、卓球、テニスといった比較的軽いスポーツは積極的に行うといいでしょう。しゃがんだ体勢や、自転車、車の運転も問題ありません。ただし、強い衝撃がかかるスポーツや、転びやすいスポーツは避けてください。それと、どんなに調子が良くてもご自身の骨も老化していきますから、年に1回程度の定期検診は必ず受け、人工股関節の状態をチェックしてもらいましょう。また、将来的に再置換が必要になった場合でも、医療技術は向上していますし、人工股関節自体も入れ替えに対応した種類がたくさん開発され再置換がしやすくなっています。
手術後1カ月程度で痛みが改善し、3カ月もすれば筋力が回復して生活も安定します。半年~1年経つと「手術をしたことすら忘れて生活しています」という患者さんがたくさんおられますね。好きな時に買い物に行ける、友達と旅行ができる、スポーツやダンスなどの趣味を楽しめる、といった普通の生活が再びできるようになったことに、喜びを感じていらっしゃる方が多くいらっしゃいます。
また、以前は変形がひどくて思うように歩けなかったのが、格好良く歩けるようになり、周りからも褒められるととても嬉しいようです。その様子を見たり、体験談を聞くことで背中を押され、迷っていた手術を決断する患者さんもいらっしゃいます。
手術前には痛みで失われていた笑顔が手術後に戻り、「もっと早く手術すれば良かった」という患者さんの声を聞くと、我々も手術して良かったと心から思いますね。
股関節が痛いと、立つ、歩くといった脚を使った基本的な動作が困難になり、毎日の生活が楽しめなくなります。とはいっても、手術はしたくないというのが多くの患者さんの本音でしょうし、我々医師も避けられるのであればそれに越したことはないと思っています。しかし、保存療法では効果がなく、人工股関節にする以外、生活の質を維持することが難しい場合もあります。人工股関節置換術は、痛みや変形をとって、股関節が悪くなかった時の生活を取り戻す手術です。現在では、長期成績も良く、安全性も高くなっています。「自分の脚で歩きたい」という気持ちがあるのであれば、とても有効な手段だといえるでしょう。
「歳だから」とあきらめてしまっては、超高齢化社会の長い老後を痛みと共に過ごさなければならなくなります。高齢であっても、手術を受けることは可能です。信頼できる股関節の専門医に相談し、自分に適切な治療法を、納得いくまで相談するといいでしょう。
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