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専門医インタビュー

案ずるより産むが易し 後悔しない治療法を選択してほしい

この記事の専門医

北村 伸二 先生

愛知県

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名古屋大学医学部卒業。知多市民病院、県西部浜松医療センター医長、名古屋大学医学部付属病院、名古屋第二赤十字病院整形外科副部長、同外傷・関節外科部長を経て、2013年より現職。 資格:日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会運動器リハビリテーション認定医、VTE 研究会評議員、名古屋股関節セミナー評議員、日本人工関節学会、日本股関節学会所属。

この記事の目次

治療法に年齢は関係ありますか?

寛骨臼回転骨切り術

寛骨臼回転骨切り術

変形性股関節症の治療法は、年齢、股関節の状態、どんな生活を送りたいかといった社会的な要素を含めて患者さんと話し合いながら決めていきます。
若い人の場合、変形性股関節症と診断されていても、実際は、臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)が原因の股関節唇損傷のことも多く、その場合は、股関節の変形度合で治療法が決まります。
明らかな臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)で、年齢が若く、股関節はあまりすり減っていないけれど、関節唇損傷の症状が出ているという場合は、「寛骨臼回転骨切り術」によって股関節の不安定性を改善します。自分の骨を使って骨盤の受け皿の面積を増やし、骨頭をしっかり覆うという手術をするわけです。
一方、中年以降の方の場合は、治療効率を考えると、骨切り術よりも人工股関節置換術のほうが向いています。それは、骨切り術はどうしても患者さんの体に負担がかかり、リハビリ期間も短くて4か月、長いと1年近くもかかってしまうからです。
すでに股関節がすり減ってしまっていて、骨切り術などでは改善が見込めない場合は、年齢に関係なく、多くの方が人工股関節置換術を選択しています。

人工股関節置換術がかなり身近になっている印象があります

ポリエチレンの分子構造を強化することで耐久性が安定

ポリエチレンの分子構造を強化
することで耐久性が安定

そうだと思います。その理由の一つには、人工股関節の耐用年数が飛躍的に伸びているということがあると思います。
昔の人工股関節は、基本的に、大腿骨頭部分が金属の球、骨盤の臼蓋(寛骨臼)部分の擦れ合う面がポリエチレンという組み合わせでできていました。ポリエチレンの質があまり良くなかった頃は、摩耗による削りカスが体内で異物反応を起こし、それが原因となって再度人工股関節を入れ替えざるを得なくなるということがあったのです。あるいは、ポリエチレンや金属の代わりにセラミックが使われている場合も、破損などが起きていました。
しかし、現在は、ポリエチレンの分子構造を強化するという技術が確立され、摩耗による問題は非常に少なくなっています。同様にセラミックも技術の向上によって耐久性が安定してきています。特に2000年以降は、摩耗・破損が原因で人工股関節を入れ替えなければいけないというケースはほとんどなくなってきたと言ってもいいでしょう。
さらに、もう一つ、人工股関節置換術の手技が進歩して、患者さんの体への負担が減っているということもあります。当院のケースでは、通常の人工股関節置換術なら一時間もかからずに終わってしまいます。

最近、MIS(最小侵襲手術)というのをよく耳にします。どういう手術ですか?

手術の展開方法で、よく用いられるのは、股関節の後方からアプローチする方法です。
後方側から行ったほうが術野がよく見えるので、ミスが起こりにくいというメリットがあり、世界的にもゴールデンスタンダードな方式です。ただし、後ろを支えている筋肉を切るので、手術直後は、後ろ向きに脱臼しやすいというデメリットがあります。
MISの代表的な方法は前方側から手術する方法です。後ろの筋肉を切らずに、前方側の筋肉と筋肉の隙間から手術をするので、後方脱臼が起きにくいというメリットがあります。
しかし、MISはいかんせん術野が見えにくい。このため、人工関節の設置角度不良や骨折による再手術のリスクはMISの方が高いですので、股関節の変形度合がきつく、足の長さが違っているようなケースには行うべきではありませんし、適応できる場合も、高度な技術を持ち、手術中の思いがけないトラブルにも適切に対処できるような熟練した医師が行うべき方法だと思います。
実際のところ、当院ではMISでも後方側からでも、術後の症状の改善度は同程度になっています。


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