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専門医インタビュー

人工膝関節手術の進化 ~コンピューター計画と耐久性の向上、痛み対策の充実~

この記事の専門医

付岡 正 先生

千葉県

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1994年に金沢大学卒業後、千葉大学整形外科入局。2000年 千葉大学大学院入学(2004年 医学博士取得)、2009年より千葉リハビリテーションセンター勤務。
日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会評議員/専門医、日本人工関節学会評議員、日本股関節学会、日本関節病学会、日本リハビリテーション医学会、Orthopaedic Research Society(米国整形外科基礎学会)active member(正会員)

この記事の目次

正確な手術を行うための工夫、術前計画

3Dプリンターを導入したシミュレーションと術前計画

3Dプリンターを導入したシミュレーションと術前計画

一般的にはレントゲンのみで手術計画を立てることが多いのですが、私は手術が決まったら患者さんのCTを撮影します。このCTを基にコンピューターによる綿密な術前計画を行います。どの方向にどれだけ骨を切るか、また人工関節のサイズと設置方向を決めておきます。さらに私の施設では平成29年2月より3Dプリンターを導入して実際の患者さんの膝そっくりの模型の作製や、手術で人工関節を正確に設置するための独自の補助器具を作成することもできるようになりました。手術前のこれらの準備には数時間を要しますが、すべての患者さんに行っています。さらに、手術中の骨切り誤差を確認するガイドも開発し、誤差があれば誤差が無くなるまで入念に調整します。
これらの工夫により、コンピューターナビゲーション(赤外線モニターを使って行うコンピューター手術)をも上回る正確な人工関節の設置が可能になっています。私が考案した工夫の一部は、海外の有名整形外科雑誌でも取り上げられています。また、人工膝関節では曲げた時と伸ばした時のスペースがほぼそろうことが理想とされますが、この調整を数値で確認できる専用機械を用いて行い、術後の膝の安定性を確保しています。

必要最小限の皮膚切開で行う人工膝関節手術

人工膝関節手術では、皮膚切開の小ささを競った時期があり、25cm程度であった皮膚切開は施設によっては10cm未満という所も出てきました。しかし、小さすぎる皮膚切開では人工関節を正確に入れるのが難しかったり、皮膚の端が裂けてしまったりするなどの弊害も認知されるようになり、今は適切な大きさの皮膚切開に落ち着きつつある印象です。私の皮膚切開は無理なく正確に人工関節が入れられる必要最小限の10-15cm程度の大きさです。
人工膝関節の手術時間は、1時間から1時間半以内がほとんどです。手術の翌日には病棟の廊下に出て、手すりを使ってのつかまり立ちと足踏み訓練を開始します。2,3日で歩く練習を始め、1週間以内に一本杖歩行が可能となる方が多いです。
人工膝関節の手術後は、特に、早期にリハビリを行うことが重要です。早期のリハビリ開始は合併症として多い深部静脈血栓症(血の塊が血管に詰まることで下肢が腫れてしまうもの)を予防するとともに、早期の社会復帰を可能にします。

進歩している術後の痛み対策

人工膝関節置換術後のレントゲン

人工膝関節置換術後のレントゲン

手術は痛そうで怖いなどの声をよく耳にします。痛みを取る方法も急速に進歩しています。一昔前までは痛みと腫れで早期リハビリが困難でした。現在は腫れ、痛みとも少なくできる方法が確立されてきています。例えば手術終了時に膝周辺にカクテル注射といって数種類の痛み止めや腫れ止めの混合液を注射します。これは疼痛管理に非常に効果があります。また、止血剤を点滴と関節内注射として用いることにより出血が劇的に減り、術後の腫れも格段に少なくなりました。昔は自己血といって手術前に血を貯めて手術に臨んでいましたが、必要なくなりました。手術時には背中からの持続麻酔を用いることで、当日、翌日はほとんど無痛となります。持続麻酔を抜く前に、痛み止めが途切れることが無いように点滴で痛み止めを6時間おきに流し、抜去後には内服薬を開始します。また、昔と比べて痛み止めの種類が増え、痛みを少しでも感じたときには別の種類の痛み止めを追加することで積極的な術後リハビリが可能となっています。


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