専門医インタビュー
神奈川県
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今なら、初めて人工股関節置換術を受ける際に、「15~20年くらい経つと再置換が必要になる可能性もある」と説明されるでしょう。しかし、人工股関節置換術を受けたら必ず再置換術が必要になるわけではありません。「手術後も定期的にきちんとフォローしていけば、もし骨や関節に不具合が起こっても一部分だけの交換や患部の治療だけで修正できる場合が多く、大事に至らないことのほうが多いと思います。」と話す近藤宰司先生に、人工股関節の再置換術についてお話を伺いました。
再置換術に使用される人工股関節の一例、白いところがポリエチレン
まず考えられる最大の理由は、骨粗しょう症の進行や人工関節の摩耗などにより、人工股関節がゆるんだ場合です。何らかの理由で骨と人工股関節がぴったりくっついていないでグラグラになってしまうと、再置換術が必要になります。ゆるみが起こる原因のひとつが、人工股関節そのものに寿命がきた場合です。人工股関節で軟骨の役割をする高分子ポリエチレンは、10年間で1~2ミリ程度擦り減ることが分かっています。そのカスがたまると、周りの骨を溶かす反応が出て、人工股関節にゆるみを起こすのです。もうひとつは、感染による炎症です。患者さんの体内にいる菌が人工股関節に付着して関節周囲に炎症を発症しゆるみを引き起こしてしまうと、新しいものに入れ替えなくてはなりません。
痛みや股関節の違和感、偽腫瘍と呼ばれる一見腫瘍のような病変ができて、足が腫れてきたために気づく場合もあります。反応が強い人は、人工股関節が少し摩耗しただけでも骨溶解が進む場合もありますが、逆にかなり摩耗していても全く反応しない人もいます。症状は人それぞれで、一律ではありません。
例は少ないのですが、一気に破損が進んで、人工股関節が折れてしまうケースもゼロではありません。とはいえ、患者さんが無理な姿勢を取ったことや転んだことが原因で人工股関節に問題が生じるようなことはほとんどありません。普通の生活をしている限り、人工股関節が折れたりすることはないのです。
実際には、人工股関節を入れた方はいずれ必ず再置換術を行わなくてはならない、というわけではありません。早い段階でゆるみなどの変化に気づいて、すぐに対応すれば、大事に至らないことのほうが多いと思います。
再置換術後のX線、数回にわたり手術を行う
その通りです。人工股関節置換術後、定期的にチェックしていれば、どんな状態になっているのか早めに分かります。しかし、最初に手術してくれた医師や、病院そのものが移転してしまっていたり、患者さん自身が遠方に引っ越しをしたりして、定期的な受診をしなくなっている患者さんがいるのも事実です。当センターでも手術された患者さんの約15%は、術後の検診を受けていないのが現状です。
人工股関節の調子が良ければ、何年もそのままにしてしまいがちです。患者さん本人が不具合を感じていなくても、レントゲンで確かめると相当悪くなっている場合もあるのです。レントゲンや血液検査などによる定期的なチェックと、専門家によるフォローは欠かせません。
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