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専門医インタビュー

手術とリハビリが一体化した治療でこそ変形性膝関節症は完治します

山梨県

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東京医科大学大学院修了。米国ロックフェラー大学留学。帰国後、東京医科大学整形外科助手を経て、貢川整形外科病院に勤務。2007年同院院長に就任。専門は脊椎脊髄疾患。高齢社会の中で、頸椎から腰、関節など、患者さんの全身をトータルで診ることができる医師を養成中。

この記事の目次

現在、膝の痛みを抱えて不自由な思いをしている人が増加しているといいます。巷には、いろいろな治療情報があふれていますが、歩きづらいまま適切な対応ができていないと、やがて要介護状態になってしまうことがあるのも事実です。貢川整形外科病院の院長である池上仁志先生に、変形性膝関節症の治療法や手術とリハビリとの関係性などについてお聞きました。

中高年になって、膝が痛くなる原因にはどんなものが考えられますか?

少し若い人であれば半月板や靱帯損傷による痛みが原因の場合もありますが、加齢とともに起こる関節軟骨の変成が膝の痛みの主な原因になっています。歳をとれば髪の毛が薄くなったり、歯が抜けたりするのと同じように、関節軟骨も誰でも徐々に減っていきます。膝関節の軟骨がなくなると、加重が直接骨に伝わるために痛みが出てきて、膝関節が腫れて歩くのがつらくなるのが「変形性膝関節症」です。なお膝が痛いと訴えてきても、実は悪いのは膝ではなく腰だったとか、別な部位に原因があったということはよくあります。痛みの原因を正しく判断した上でないと、適切な治療もできません。下肢の痺れや麻痺などの神経障害を伴っていないか、他の症状も見逃さないようにしながら、レントゲンやMRI、筋電図などを使った科学的な診断も重要です。体重の重い人、長い間農作業などの膝に負担をかけやすい姿勢をとってきた人は、デスクワークをしてきた人に比べると、変形性膝関節症にかかりやすく進行も早いともいわれています。できるだけ膝に負担がかかりすぎないように、体重のコントロールは日頃から気を付けてください。

変形性膝関節症の治療法を教えてください。

治療法は症状の度合いによって異なってきます。大事なことは、自分の膝の状態を正しく把握することです。一般的に、変形性膝関節症は症状によって5段階に分けられます。初期であるグレード1~2の段階は、軟骨がまだ少しでも残っている状態です。この段階では、少ない軟骨をしっかり守るための筋力強化とヒアルロン酸の関節注射で軟骨を保護する保存療法が、治療の大原則になります。筋力強化というのは、主に太ももの筋肉である大腿四頭筋を鍛えることで、膝を守り支えて軟骨への負担を減らす効果があります。
保存療法を続けても、症状が悪化して動きづらく日常生活がつらい場合には、人工膝関節置換術の出番になります。具体的には、軟骨が減り続けて膝関節の変形が進み、痛みが取れにくくなるグレード3の段階では経過を観察して、軟骨がほとんどすり減って隙間がなくなったグレード4~5段階に入ったら、人工膝関節置換術の適応になります。動いているときばかりでなく寝ていても膝が痛み、膝に体重をかけることができなくなると、歩かないから筋肉が痩せていきます。さらに膝関節が不安定になり、歩くことが困難になります。このような症状があらわれたら、できるだけ早めに人工膝関節置換術を行うように勧めています。軟骨がなくなって骨同士がぶつかり合うが痛みの原因ですから、軟骨がなくなってしまえば、それに代わるものを入れてあげないと痛みは取れません。それが人工関節です。

変形性膝関節症のX線(グレード別)

人工膝関節置換術を行うタイミングについて教えてください。

人工膝関節置換術 前後のX線写真

人工膝関節の耐用年数は約20年ですので、再置換をしなくてもいいように、手術は60代後半以降の人たちに行うのが一般的です。80代のお年寄りで、関節軟骨のグレードが4~5の段階にあり、痛いために生活が制限され旅行や買い物にも行けない状態だったら、心臓や肺の状態が元気なうちに人工膝関節の手術をすることを勧めます。しかし、年齢が若い人でも痛みが強くて生活に支障が出ているようであれば、手術を勧めています。痛みに耐えながら、手術年齢になるまでいたずらに歳を取るのを待ってはいられません。人工膝関節置換術の目的は「QOL(生活の質)の向上」です。一人ひとりの患者さんの状況によって、人工膝関節置換術を行うタイミングはそれぞれ違ってきます。当院に紹介されてくる患者さんの多くは、地域のクリニックでさんざん保存療法を続けてきた人たちです。消炎鎮痛剤の服用やヒアルロン酸注射では症状の軽減が望めない、関節変形がかなり進んでおり痛みも強く思い通りに動けない、という患者さんに人工膝関節置換術を行っています。


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