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専門医インタビュー

適切な治療で痛みを解消 人工膝関節置換術で生活圏を広げて、より前向きな人生を!

兵庫県

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日本整形外科学会認定整形外科専門医

この記事の目次

高齢者が膝の痛みを放置して適切な治療を行わないと、要介護につながる可能性が高くなるといわれています。しかし、高齢化が進んでおり、老老介護が増えている現状では、介護する側にとっても膝の痛みは大きな問題です。変形性膝関節症は、50代以上の男女、特に女性に多く、早い人では40代から徐々に膝に違和感を覚え始めます。「再置換も視野に入れ、50代~60代で人工膝関節置換術を行うのも、老後の生活を送る上では選択肢の一つです」とアドバイスする済生会兵庫県病院の木下恵祐先生に、膝の痛みを取り除く治療法「人工膝関節置換術」を中心に、幅広く教えていただきました。

膝の痛みに悩んでいる人が多いと聞きますが、その主な原因は何でしょう?

変形性膝関節症

変形性膝関節症のX線

大腿骨壊死、関節リウマチ、偽痛風、外傷後の変形による関節症など、様々な要因が考えられますが、高齢化の進んでいる現在で一番多いのは、やはり加齢変化による「変形性膝関節症」でしょう。女性に多い疾患で、罹患者全体の70%~80%を占めています。正常な軟骨はツルツル、スベスベとしていて、骨と骨との間のクッションの役目を果たしていますが、歳をとるにつれてすり減り、ザラつき、毛羽立ってきます。軟骨には神経がないため、擦り減り始めても痛みを感じることはありませんが、変形が進んで骨がむき出しになり、直接こすれ合う・ぶつかり合うようになると、痛みが出てきます。
変形性膝関節症の進行には、肥満や生活様式が大きく関わっていると考えられます。膝が痛くなると歩かなくなりますが、同時に、運動量が減るためにカロリーが消費されにくくなります。その結果、ますます肥満傾向が進み、痛みも強くなるといった悪循環に陥ってしまいがちです。さらに、歩かずに長く家に引きこもっていると、うつ病や認知症を発症することも珍しくありません。介護が必要になれば、ご本人だけの問題ではありませんので、配偶者や息子さん、娘さんといったご家族が心配して、受診に付き添って来院されるケースもあります。その一方で、高齢化が進むことで老老介護が必要となり、80代~90代の人たちを50代~70代の人たちが介護しているというのが現実があります。その介護をしなければならない側の人たちも、膝の痛みに悩んでいるというのが最近の傾向として感じています。

変形性膝関節症の具体的な治療方法を教えてください。

まずは、患者さんの年齢や進行度に合った、適切な治療計画を立てます。まだ変形がそれほど進んでいない初期の場合は、大腿四頭筋などの筋力トレーニング、痛みが強い場合は内服薬投与やヒアルロン酸の関節内注入など、運動療法や薬物療法といった保存的治療を行います。受診当初から変形が強く、明らかに日常生活が阻害されているような人には、やはり、変形した膝関節の表面を取り除き人工関節に置き換える「人工膝関節置換術」をお勧めすることになります。もちろん強制的ではなく、メリット・デメリットを十分説明し、患者さんやご家族が十分に理解・納得された上で、手術を受けるかどうかを判断してもらいます。手術のメリットは、何といっても除痛です。痛みが和らぐことと、さらにO脚変形が矯正されて真っ直ぐな脚になることで、歩容が改善されます。家に閉じこもりがちだった生活から、旅行に行ったりスポーツをしたりと、生活圏が広がって人生に前向きになられる人が多くみられます。デメリットとしては、多少の痛みが残る場合もあること、可動域にある程度の制限があること、稀に感染症などの合併症が起こる可能性があることなどです。

人工膝関節置換術はどのように行われるのですか?

人工膝関節置換術の流れ

大腿骨と脛骨をインプラントの形に合わせて切り、骨セメントで
人工関節を固定します

まず、膝の前面の皮膚を12cm~15cm切開し、変形した軟骨部分の表面を削り取ります。大腿骨、脛骨をそれぞれインプラントの形に合わせて切り、骨セメントで人工関節を固定します。金属製のインプラントが直接カチカチぶつかると金属疲労を起こしますので、その間に高分子量ポリエチレンプレートを挟んで金属がこすれないようにします。いわゆる「膝のお皿」の部分にあたる膝蓋骨の裏も軟骨が傷んでいることが多いので、当院では半分に切ってポリエチレンに置き換えています。手術時間はだいたい1時間~1時間半で終了、また麻酔は腰からの麻酔と全身麻酔を併用して行います。
術後、膝関節は人工関節に置き換わるため動かす時に痛みは生じませんが、手術時には多少筋肉を切ったり脚の変形矯正で靭帯が伸びたりするので、手術直後はやはり少し痛みができます。しかし、痛いからといって術後に動かないと、回復が遅れるだけでなく血栓症を起こす危険性も高まります。できる限り早い段階でリハビリをスタートすることができるよう、当院では人工膝関節置換術の全例に、大腿神経ブロックを1週間留置することで痛みを和らげ、術後の疼痛管理を行っています。


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