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専門医インタビュー

人工膝関節置換術だけでなくご自身の関節を温存できる骨切り術など状態にあわせた治療があります

  • 岩崎 浩司 先生
  • 北海道大学大学院医学研究院 整形外科学教室
     膝関節機能再建分野 特任助教
    北海道大学病院 整形外科
  • 011-716-1161

北海道

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医学博士、日本整形外科学会専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会、臨床バイオメカニクス学会、日本Knee Osteotomy and Joint Preservation 研究会、北海道整形災害外科学会

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この記事の目次

変形性膝関節症に対して人工膝関節置換術が行われていることをご存じでも、関節鏡手術や骨切り術などにあまり馴染みがないかもしれません。変形性膝関節症に対しては色々な手術があり、手術によって術後の行動制限などが変わってくるようです。今回は北海道大学病院 整形外科 岩崎 浩司先生に変形性膝関節症に対して行われている様々な手術の特徴などについてうかがいました。

変形性膝関節症の治療にはどのようなものがありますか?

変形性膝関節症の治療には保存療法と手術療法があり、一般的には保存療法から行われます。保存療法には飲み薬や湿布などを含む痛み止めの使用や、関節内へのヒアルロン注射、O脚であれば靴の中にインソールを入れて内側にかかっている荷重を外側に逃し痛みを軽減させる方法があります。その他に膝を支える太ももの筋力トレーニングなどの運動療法や、減量などの生活指導が行われます。

ヒアルロン酸注射

ヒアルロン酸注射

インソール

インソール

変形性膝関節症に対しては、どのような手術が行われていますか?

変形性膝関節症の手術には関節鏡手術、骨切り術、人工膝関節置換術があります。
日本人の場合、変形性膝関節症はO脚気味の方が多いため、初期の段階は膝の内側にある半月板から損傷してくることがあります。関節鏡手術は数か所小さく切ったところから小型のカメラや手術器具を入れ、傷んだ半月板を縫ったり削り取ったりする手術です。手術を行うことで症状の緩和を期待できますが、脚の形は変わっていないので膝の内側にかかるストレスは改善されていません。近年は、半月板損傷の原因は、脚の形(主にO脚)に起因することがあると報告されおり、関節鏡手術だけでは予後が芳しくないことがあります。日本国内ではあまり積極的に行われていませんが、海外では20~30代の方に対して関節鏡手術だけでなく後述する骨切り術を積極的に行い、膝にかかる荷重を変えて予後を改善させようとしている国もあります。
膝の内側もしくは外側に限定されている軽度から中等度の変形であれば、骨切り術や人工関節部分置換術が適応となってきます。骨切り術はすねの骨などを切り脚の形を変えることで、内側もしくは外側にかかる荷重を変えることで痛みを軽減させます。ただし軟骨がすり減った部分はそのままなので、痛みが残る場合や変形が進行した場合に改めて人工膝関節置換術が必要となることがあります。
人工膝関節部分置換術は、悪くなっている膝の内側もしくは外側の骨を削り部分的に人工関節に置き換える方法です。変形が膝全体に進んだり膝の動きがかなり悪くなったりしていれば、膝関節の表面を全て人工のものに換える人工膝関節全置換術が適応になります。人工膝関節置換術は除痛効果に優れた手術ですが、手術を受ければ若い頃のような膝に戻るわけではなく、人工のものが入るので違和感が出ることもあります。

関節鏡手術

関節鏡手術

骨切り術

骨切り術

人工膝関節部分置換術

人工膝関節部分置換術

人工膝関節全置換術

人工膝関節全置換術

どのような状態になれば手術を考えたほうがいいでしょうか?

保存療法をしっかり続けることで、多くの方の症状が緩和されます。しかし保存療法の効果をあまり感じていない比較的若い方であれば、骨切り術を早めに検討しても良いのではないかと思います。変形が進んでいる高齢の方であれば、ご自分で買い物に行けなくなるほど症状が悪化したり筋力が衰えたりする前に、手術を検討したほうが良いと思います。

変形性膝関節症で行われる手術の特徴などを確認したほうがいいのでしょうか?

手術を検討されている方の中には、激しいスポーツを続けたい方や、農業や漁業などの仕事または日常生活で膝を深く曲げたり強い負荷がかかったりする生活を続ける必要がある方もおられます。手術によって術後の行動制限が異なるので、手術の特徴などを事前に確認したほうが良いと思います。
一般的に人工膝関節置換術後は、膝をあまり深く曲げられないため、激しい運動は控えたほうが良いと言われています。骨切り術は、骨を固定するために1年程度金属製のプレートを入れその後抜去しますが、骨が癒合すれば行動の制限がかなり緩和されます。
主治医には、ご自身の仕事や趣味、日常で行いたいことをしっかり伝え、相談しながら症状と併せて適切な手術を選ぶようにしましょう。

手術を受けないと将来どのような状態になるか、医師に確認したほうがいいでしょうか?

膝の痛み

手術を受けるかどうかは患者さんご自身で決めることですが、手術を受けないとご自身が将来どのような状態になる可能性があるかを医師に相談しても良いと思います。手術を受けずにそのまま我慢していると、変形が進んだり脚の筋力が衰えたりすることが考えられます。本来なら、骨切り術や人工関節部分置換術で済んだ方が、人工膝関節全置換術が必要になってしまうことがあります。また、筋力や体力がかなり衰えてから人工膝関節全置換術を受けると、膝の痛みが軽減したとしても、筋力を回復させるまでに時間がかかったり、歩く際に不安定だと強く感じたりすることがあり、せっかく手術を受けたのに、治療効果に満足できないことがあります。

医師に入院期間や職場への復帰時期を確認してもいいのでしょうか?

早期の職場復帰を希望される場合も医師に相談した方が良いでしょう。
人工関節置換術の場合、一般的に2~3週間ほど入院することが多いですが、早期回復のために手術翌日から全体重をかけて立ったり歩いたりといった運動を始めます。なお、部分置換術のほうが侵襲が少なく回復が早いです。退院後の日常生活についての制限については、医師によく確認してください。傷口の腫れや痛みは3ケ月程度続くと思います。
骨切り術を受けた場合、骨が癒合するまでに3ケ月程度かかります。術後しばらくは膝に無理な負荷をかけないために松葉杖を使うことが一般的です。仕事に復帰できるまでの期間は、お仕事の内容により異なります。事務職であれば約1ケ月、軽い立ち仕事などは約2ケ月、肉体労働であれば約3ケ月で職場復帰されている方がおられます。ただし骨が癒合するまでの間に無理をすると、骨が癒合しなくなることがあります。どんなに調子が良くても、骨が癒合するまでの間は無理をしないように注意してください。

変形性膝関節症に悩んでいる方へメッセージをお願い致します

変形性膝関節症の手術といえば、人工膝関節置換術を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかしご自身の関節を温存できる骨切り術という方法などがあり、状態に合わせた色々な手術があるということを知っていただきたいと思います。
今回は手術を中心にお話をさせていただきましたが、手術に抵抗がある方は多いと思います。できるだけ手術を受けないようにするには、痛みが出始めたら早めに整形外科で診断を受け、痛みの原因にあわせた治療を早めに行うことが大切です。
できるだけ膝の痛みに悩まない生活を送るために、お困りのことがあれば気軽に膝を専門にする整形外科医にご相談ください。


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