メニュー

専門医インタビュー

~痛みなく運動することができる脚・腰は健康の基本~除痛だけでなく社会復帰を目的にした人工膝関節置換術

宮崎県

プロフィールを見る

日本整形外科学会認定整形外科専門医

この記事の目次

若者からお年寄りまで、膝の痛みに悩まされている人は、決して少なくありません。膝を痛める原因については、世代や性別、生活習慣に伴うものなど、様々考えられます。実際に、70~80歳の人はたくさん子育てをして膝に相当な負担が掛かる労働をしていましたが、現代の女性はまた状況が異なっているといえるでしょう。今回は、膝の痛みの対処法や治療法としての人工膝関節置換術、痛みのなく運動ができる脚・腰を作る大切さなどについて、橘病院・院長の柏木輝行先生にお話を聞きました。

多くの人が変形性膝関節症に悩まされていますが、どのような予防策が有効ですか?

変形性膝関節症の原因には、元々の膝の形であったり、和式の生活様式であったり、様々な要因が考えられ、新聞や雑誌、教科書や論文などに書いてある内容、どれを読んでもほとんど同じで、具体的には加齢や外傷による軟骨のすり減りが原因です。このような原因を知ることも大事ですが、もっと大切なのは変形性膝関節症をどのように防ぐのかという「予防策」です。
変形性膝関節症を防ぐためには色々な方法がありますが、基本的には膝の筋力を落さないことが一番重要だと考えています。特に症状が初期の段階では、とにかく体を動かすこと、筋力を丈夫にすること、そして骨を丈夫にしていくことが大切になります。中でも患者さんにお勧めしているのは、比較的強く運動をすることです。「痛いから安静にする」、「痛いから無理をしない」、「変形しているから休む」、「負担が掛からないことをする」ということは、外来ではほとんど指導しません。むしろ、日常生活の活動性を上げるためにサポートしていくのが、医師の仕事だと考えています。今、膝が痛いから無理をしないで動かないのではなく、積極的に動いて筋力をつけ、骨と筋肉を鍛えていくことが予防する上で一番大事なことです。

変形性膝関節症を防ぐために重要なポイント

○とにかく体を動かす
◯膝の筋力を丈夫にする      
◯骨を丈夫にしていく

×痛いから安静にする
×痛いから無理をしない
×変形しているから休む
×負担が掛からないことをする

手術をするかどうかの判断は、何を基準にするのですか?

変形性膝関節症のX線。下から見ると骨が直接ぶつかっている

手術を勧めるかどうかは、レントゲン上の所見と患者さんの症状を診て、総合的に判断し決定します。症状が初期の状態で手術を受ける人は多くはありませんが、レントゲン上は症状がかなり進行しているのにも関わらず痛みがないために、「手術だけは嫌だ」という人もいます。このように同じ膝でも、「膝が痛むため、手術を早くしてください」という患者さんもいれば、「手術だけは嫌です」という患者さんもいます。もちろん、家族の考えも同様です。「70~80歳になって手術をするなんてとんでもない」という家族もいれば、既に日常生活に支障が出ている状態を見かねて、手術を希望される家族もいます。ゆっくり時間をかけて何ヶ月、何年という経過を観察した上で、お互いの信頼関係やその人の痛みの具合、生活様式を分かった上で、意見が合致すれば手術を行います。
なお、手術適応の判断は病院によっても異なっており、レントゲン上で末期の状態になければ手術しないという医師もいますが、私は症状が中期あるいは進行期でも、現実的に痛みで苦しんで涙も止まらないという人には手術を行っています。年齢に関しても同様です。70歳以上でないと手術をしないという考え方もありますが、そうなると50歳の人が20年間痛くてボロボロの膝で耐えなければならないのか、という問題が出てきます。実際に手術をした患者さんの年齢としては、30代後半の人が一番若く、最高齢では95歳の方です。内科的に問題があれば絶対手術しませんが、手術を受けられて「やっぱりして良かった」というケースがほとんどです。

それでも「手術は嫌だ」という人もいるかと思いますが。

患者さんの意向にもよりますが、整骨院や柔道整復師を希望される方には積極的に紹介状を書いています。どんなに注射しても痛みが取れない場合でも、針治療でスパッと取れるということもあります。もちろん、全く効果がないこともありますが、治療方法には向き不向き・好き嫌いがありますし、医師側としてもできる限り情報を提供して、患者さんが治療に取り組みやすい環境を作っていくことが大事だと思います。


この記事の医師がいる
病院の詳細はこちら

ページの先頭へもどる

PageTop