専門医インタビュー
群馬県
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足の親ゆびが変形し痛みを生じる外反母趾。なかでも変形が強い中等度~重度の方には、手術をすることで変形を改善し痛みの緩和を期待することができます。今回は、東前橋整形外科病院 院長で足の外科センター長の日尾有宏先生に、外反母趾の手術方法であるLapidus法(ラピダス法)についてうかがいました。
外反母趾の患者さんのうち、親ゆびの曲がっている角度(外反母趾角)が30~40度未満の中等症、40度以上の重症といった変形の強い方や、第1中足骨と第2中足骨の角度(中足骨間角)が15~20度以上曲がっている場合、第1足根中足関節(第1TMT関節)の不安定性がある場合などに適用されることが多くあります。また、若い時に外反母趾の手術を受けられた方で外反母趾が再発した場合にLapidus法が適用されることもあります。
ただし、外反母趾の症状は親ゆびが曲がっていることだけではありません。親ゆびが人差しゆびの上や下に交差してしまっている、ゆびが重なった箇所が痛い、靴に当たって痛い、足裏にタコができて痛い、ゆび先が地面に当たって痛いなどさまざまです。また外反母趾によって姿勢やバランスが悪くなり転倒する危険性もあります。その方の症状に応じて手術方法を決めることが大切です。
外反母趾の手術にはさまざまな方法がありますが、Lapidus法は足の甲にある第1TMT関節の一部を切って変形を矯正し固定する方法で、ほかの手術方法と比べて矯正力が強く、矯正した骨が元の位置に戻りにくい(再発しにくい)のがメリットです。Lapidus法が開発された当初は、第1TMT関節だけでなく人差しゆびの第2中足骨の一部も一緒に固定を行っていましたが、近年は固定する部位が状態に応じて多様化しています。また親ゆびだけでなく、タコや変形・痛みを治すために他のゆびも一緒に手術することもあります。患者さんが何を改善したいのかによって手術内容を検討していくことが大切です。
関節を固定する材料も進歩が続いています。Lapidus法が始められた当初は糸を使って固定していたといわれていますが、現在はチタン合金のインプラント(スクリュー、プレートなど)を使用するケースが増えています。そのため、以前は骨が癒合しない確率が25%と高めだったのですが、現代では1~2%まで下がっています。高い矯正力で固定できることで、外反母趾が重度の患者さんでも手術を選択することができ、術後早期のリハビリ開始と社会復帰を期待することができます。
年齢の制限は特にありませんが、できれば50代以上がいいと考えています。若い方の場合、骨や皮膚などが成長期であることが多く、Lapidus法で関節を固定してしまうとその後の成長に影響が出てしまう可能性があるからです。一方、全身状態を検査した上で手術が可能と判断されれば、80代など高齢の方であっても手術ができることがあります。慎重に判断する必要があるケースとしては、Lapidus法に限らず整形外科手術全般にいえることですが、糖尿病、肝硬変、透析をしている方などです。理由は、血液が止まりにくいことや、術後の皮膚や骨の回復が遅いことなどが挙げられます。
術後は、ベッドで足のゆびを動かすリハビリから始めます。2~4週間後には足先に体重をかけて歩く練習を行います。この荷重歩行の開始時期は患者さんの状態や施設によって異なりますが、特に高度の骨粗鬆症の方の場合は開始までに時間がかかることもあります。
その後は、装具やギプスなどの外固定をしながらの退院となり、その時期になると短時間での家事や、座ってのデスクワークが可能になります。装具は約3ヶ月で外します。この時期のリハビリはとても大切ですので、できれば通院してリハビリの指導を受けていただくといいでしょう。
車の運転はおおよそ手術をして約2ヶ月後、立ち仕事や重い物を持つなどの重労働は骨が癒合してからとなりますので、手術をして約3~4ヶ月後となるケースが多いです。スポーツも、約3~4ヶ月後から少しずつ復帰できるようになります。コンタクトスポーツもある程度は徐々にできるようになります。術後の歩き方を心配される方もおられますが、手術前と比較して、体重の移動がスムースになられる方が多い印象です。手術前になさっていた楽しみを諦める必要はないといえるでしょう。
Lapidus法は親ゆびがどれほど曲がっていても、また親ゆびが他のゆびと重なっているような状態でも治療選択肢となりうる手術方法です。外反母趾に長年悩まれている方も「手術をしてもどうせ治らない」と諦めないでほしいと思います。「歩くこと」は生活に大きく関わる動作です。いつもの生活で歩くことにモヤモヤがあったら気分が落ちると思います。また、足はとても敏感な箇所なので、大小に関わらず痛みがある生活は大変だと思います。まずは、どんな些細なことでもかまいませんので専門医に相談していただきたいですね。
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