専門医インタビュー
石川県
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半月板はひざを動かす際に重要な役割を果たしていますが、常に負担がかかりやすく、しかも、一度損傷してしまうと自然治癒しにくい組織といわれています。このような特徴をもつ半月板の異常にいちはやく気づきしっかりとケアするために、どのようなときに半月板損傷を疑うべきなのか、また発症したらどのような治療を受けられるのか、金沢大学附属病院の中瀬先生に詳しいお話を伺いました。
半月板(はんげつばん)は膝関節の内側と外側にひとつずつあり、荷重の分散や衝撃の吸収をおこなうクッションの役割を、また大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)の間にあることで、骨同士の適合をよくし膝関節の安定をはかるソケットの役割を果たしています。
体重を支える荷重関節には膝関節、股関節、足関節があり、膝関節はほかとくらべて骨性支持が少ないのが特徴です。正座するときなどに大きな可動域が得られるのがその理由で、骨の代わりに半月板、靱帯、筋肉で安定をはかっています。にもかかわらず、人体で最長の長管骨である大腿骨やそれに次ぐ脛骨、さらには、最大の骨格筋である大腿四頭筋に接続しているという、力学的に不安定なわりに過酷な環境下に置かれているため、膝関節、さらには、そこで荷重分散や衝撃吸収を担う半月板に負担がかかりやすくなってしまいます。
若年層の場合、スポーツなどによる外傷が主な原因となります。膝関節に力が加わると半月板断裂が起こり、ときに靱帯断裂をともなうので注意が必要です。また、外側の半月板が生まれつき厚い円板状半月板であることも半月板損傷の原因となります。これはアジア人の約8%に見られる形態的特徴で、大腿骨との接点が小さくなることで半月板に大きな負荷がかかり、日常生活動作など比較的軽い力でも半月板断裂が起こることがあります。
半月板断裂が起こった箇所が内側の半月板なら膝関節の内側に、外側の半月板なら膝関節の外側に痛みが出てきます。その他には、半月板と膝関節表面の軟骨との滑らかな連動が妨げられ、膝を曲げ伸ばしたときに引っ掛かりを感じるキャッチング、大きくなった半月板断裂部に大腿骨が挟まり、膝を伸ばせなくなるロッキングという現象が起こることもあります。
内側半月板の後根断裂
主な原因がスポーツなどによる外傷なので、10~20代の活動性の高い男性や、中学・高校生のサッカーやバスケットボールの女子選手に発症しやすい傾向があります。これらの患者さんの中には、靱帯断裂を併発している方も多くいます。円板状半月板を原因とする半⽉板損傷は小学・中学生に多く見られ、日常生活動作や比較的軽いケガにより発症してしまう傾向があります。
40代以降では、加齢により半月板が擦り切れることで半月板変性断裂になる方が増えます。また60代以降になると半月板変性断裂がさらに進むことで内側半月板後根断裂を起こす方が多くなります。これは内側の半月板が脛骨との接続部付近で断裂するもので、しゃがむ、階段を降りるといった日常生活動作のなかで、これにより突然膝裏に激痛が走ることがあります。
なお、これらの半月板損傷はいずれも軟骨に影響を及ぼし、将来的に変形性膝関節症へと進展することが多くみられます。
左右の膝をくらべて腫れが出ている場合や、1・2日間ほど痛みが引かない場合、曲げ伸ばししたときに引っ掛かりを感じる場合や、完全に伸ばしきれない場合は整形外科を受診したほうがよいでしょう。
なお、前十字靭帯断裂とともに発症しているときは特に注意が必要です。なぜなら、受傷後3~4週間すると、腫れや痛みが軽くなって治ったような気がするからです。しかし、前十字靭帯は基本的に自然治癒しません。そのため、そのままスポーツ復帰をすると、ストップする動作や着地をしたときに膝がガクンとはずれる膝崩れが起き、半月板断裂が進行したり軟骨損傷を発症したりと状態がさらに悪化するので、早期に整形外科を受診されることをおすすめします。
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