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専門医インタビュー

がんロコモを知ろう

東京都

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日本整形外科学会専門医・指導医、日本整形外科学会認定骨・軟部腫瘍医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本がん治療認定医機構認定医

この記事の目次

「不治の病」というイメージの強かった“がん”。今では医療の進歩により「共生する病へ」と印象を変えつつあります。それはもちろん喜ばしいことでありながらも、一方で骨や関節などの運動器に痛みが出ても、がんの痛みだと思い我慢したり諦めたりしている方も多いようです。
帝京大学医学部附属病院 整形外科の今西淳悟先生に「がんロコモ」について教えていただきました。

「ロコモ」と「がんロコモ」の違いについて教えてください

がん自体などが原因となり移動機能が低下した(ロコモになった)状態

ロコモはロコモティブシンドロームの略称で、日本整形外科学会が提唱した概念であり、骨や関節、神経といった運動器の問題によって移動機能が低下した状態のことをいいます。移動能力の低下と聞くと、脚の問題と思われるかもしれませんが、脚だけではなく腕に問題があって、移動能力が低下していることもあります。
がんロコモとはがん患者さんが、がん自体などが原因となり移動機能が低下した(ロコモになった)状態のことをいいます。がん患者数は毎年増加しているだけでなく、抗がん剤などによる治療法が進歩したことで、長期にわたってがんを治療されている方も増えています。がんを患っていない高齢者の場合、進行度の違いはありますが一般的に7割くらいの方がロコモになっているといわれます。一方で高齢のがん患者さんでは、9割以上がロコモになっていたという報告があります。ロコモが進んでしまうと、自立した生活ができなくなるリスクが高まり、身体機能の低下だけでなく精神的にも辛くなることがあります。またそれが原因で、本来受けるべきがんそのものの治療を受けられなくなることもあります。できるだけ早期にがんロコモを発見して、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)を低下させないように改善していくことが大切だと思います。

「がんロコモ」の原因について詳しく教えてください

骨折
要支援・要介護となった原因疾患

要支援・要介護となった原因疾患
※平成25年厚生労働省
 国民生活基礎調査より

日本整形外科学会のがんロコモワーキンググループは、がんロコモは3つの大きな原因があると報告しています。
そのうちの1つが、「がんによる運動器の問題」です。骨にできるがんには、骨肉腫など骨そのものにできるものと、乳がんや前立腺がんなど骨以外で発生したがんが骨に転移してできるものがあります。そのようながんによって、骨や筋肉などの運動器に痛みや麻痺が生じたり、骨折を引き起こしたりすることがあります。2つ目の「がんの治療による運動器の問題」は、がんに対する放射線治療により骨がもろくなることが原因で骨折したり、抗がん剤の副作用によってしびれなどの症状が出て歩きづらくなったりすることがあります。また、骨に発生した腫瘍の治療を行う場合、手術で骨ごと取り除く場合があります。このようながんの治療にともない移動機能が低下することがあります。
3つ目は、「がんと併存する運動器疾患の進行」です。がんの患者さんが変形性膝関節症や脊柱管狭窄症など移動機能に影響を与える疾患を発症し、それらが進行することがロコモの原因となる場合もあります。
このような原因によってがんロコモになることがありますが、がんの患者さんは、がんのある部分以外に痛みがあってもがんの痛みが原因だと考えて、我慢したり諦めていたりすることがあります。しかし、その原因は色々あるので、まずは治療を受けている医師や整形外科医にその痛みを伝え、正確に診断してもらうようにしましょう。

がんロコモを予防する方法はありますか?

がんの治療に専念するあまり運動不足になっていることが多くあるので、移動機能が低下しないようにできる範囲で運動を行ってほしいと思います。運動と言っても特別なものではなく、日本整形外科学会公式のホームページに掲載されている「ロコトレ」なども参考にしていただき、ご自宅でできるものを日常に取り入れるようにしましょう。がんは不治の病というイメージがありました。しかし近頃は治療法が進歩したことで、がんは共存するものという印象に変わりつつあります。実際に長い間がんと共に過ごしている患者さんは増えています。がんロコモの原因が分かっても、がんを患っているからと手術を敬遠したり、治療の選択肢から排除していたりする方もおられます。
しかし、適切な治療を受けることで痛みを和らげることが期待できるだけでなく、がんの治療を継続して受けられるようにするとともに、がんが治った時のためにも移動機能を保てるようにしてほしいと思います。

ロコトレの5段階
参考:日本整形外科学会ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト
https://locomo-joa.jp/check/locotre/

この記事を読んでいただいた方へメッセージをお願い致します

がんロコモは、まだまだ新しい概念ですから、これから検証が必要なことがあります。しかし、がんロコモに対する活動は、整形外科の医師だけではなく、様々な診療科の医師やリハビリテーションの理学療法士なども含めた色々な方々と一緒に力を合わせて取り組んでいます。がんロコモの患者さんは大変多く、この活動が普及していくことで患者さんが抱える色々な悩みをサポートできると思います。
がんだからと諦めたり悩んだりせずに、がんの主治医だけではなく整形外科医など様々な先生方にも気軽に相談してほしいと思います。


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