専門医インタビュー
岡山県
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膝に痛みがあっても自己流で治療されたり、受診することを控えたりされる方も多いのではないでしょうか。整形外科を受診すれば、痛みの原因が分かり、それに対する治療を受けられるだけでなく、日常生活で注意するアドバイスももらえるようです。倉敷中央病院 整形外科主任部長 兼 人工関節・関節機能再建センター部長 伊藤宣先生に、変形性膝関節症に対して行われている色々な治療法について詳しく教えていただきました。
変形性膝関節症は、遺伝、スポーツをしている時の怪我や日常生活での捻挫、体重増加や運動不足など様々な要因が膝に影響を及ぼしていると考えられ、近年の様々な研究により遺伝がこれまで考えられていたよりも強く影響していると考えられるようになっています。
若い頃には何の違和感がなくても、中高年になって膝に痛みを感じる方も多いと思います。加齢によって関節の軟骨がだんだん悪くなると言われますが、実は関節の軟骨というのはかなり精密な構造で、80年から90年は耐えられるようにできています。しかし皆さん全員がこのような長期間にわたり軟骨の状態を維持できるとは限らず、もともと遺伝的に軟骨が損傷しやすい方や過去に怪我をしたことがある場合は、何かのきっかけによって膝の状態が悪化すると変形性膝関節症になることがあります。
例えば朝、ベッドから起き上がる時に少し膝が痛くても、30分も経てば痛みを忘れてしまうことがあると思います。膝が痛くなってもしばらくすると症状が治まるようであれば、受診する必要はないと思います。しかし、ベッドから起き上がった時だけでなく、痛みのせいで朝の家事が思うように進まなかったり、痛みを繰り返したり、安静にしてもなかなか痛みが治まらない場合は、一度整形外科を受診して、膝の状態を確認されたほうが良いと考えます。
受診が億劫と感じる方や、整形外科を受診すると手術を勧められると思う方もおられると思います。しかし、治療には症状や状態に合わせたものが様々あり、初期の段階から手術ということはありません。整形外科を受診することで痛みの原因が分かり適切な治療を受けることができるだけでなく、どういったことに注意して生活していけば良いかなどのアドバイスをもらうこともできます。逆に受診を遅らせてしまうと、ご自身ではそれほど悪くないと思っていても、実際には関節の変形がかなり進んでいることがあります。また、膝が悪いと思っていたのに、実は腰など他の部分に原因があることも多いので、受診することによって痛みの原因を正しく確認できます。
変形性膝関節症と診断された場合、まず行われるのが保存療法です。
特に太ももの筋肉をつけることで症状の改善効果が期待できるので、積極的に筋力トレーニングを行っていただきます。その他にも、自転車漕ぎや水中ウオーキングなど、さまざまなトレーニング法があります。また、日常生活に支障が出るほど痛みがあれば内服薬や湿布で急性の痛みを抑えた上で、筋力トレーニングを行っていただきます。
膝に負担をかけないように、また、悪化させないために日常生活で気を付けていただきたいのが、ご自身が痛いと感じる動きを避けたり、痛みがあるのに無理に動かしたりするのは控えることです。そうして痛みが治ってから、また普段の生活に戻ったり、トレーニングを再開してください。しかし、痛みがあると色々な行動を次々と避けてしまう方がおられ、そうすると、筋力がどんどん弱ってしまいます。日常生活での適正な歩数や避けたほうが良い運動、筋力トレーニングの方法などその方に合わせた生活指導を受けることも大切だと思います。
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