専門医インタビュー
膝が痛くても、まだ我慢できると思って受診をためらうことはないでしょうか? 変形性膝関節症は、年齢を重ねるごとに徐々に進行していく疾患なので、放って置くうちに骨の変形が進み治療方法が限られてくることがあるようです。吉野川医療センター整形外科部長の高砂智哉先生に、変形性膝関節症に対しての様々な治療法についてうかがいました。
若い方であれば、ケガなどによる外傷や、スポーツなどでの使い過ぎ(オーバーユース)によって、半月板や靭帯を損傷することがあります。中高年の方の場合、大腿骨内顆骨壊死(だいたいこつないかこつえし)や関節リウマチ、痛風、偽痛風(ぎつうふう)などの疾患が考えられますが、一番多いのは変形性膝関節症です。
変形性膝関節症は、加齢に伴う半月板の断裂や逸脱により軟骨が損傷する場合や、膝の軟骨が加齢による変性で弾力性を失い損傷していくことが主な原因です。その他に、長期間の重労働など職業に起因する場合や、若い頃に膝の靭帯や半月板を損傷したということも原因になることがあります。40歳代から症状が出る方もおられますが、60歳代以降の特に女性に多いのが特徴です。日本人の場合、O脚の方が多いのですが、O脚だと膝の内側に体重がかかるので、内側の軟骨から損傷し脚の形がさらにO脚に変形していくことがあります。
変形性膝関節症は、徐々に進行していく疾患です。初期の段階では、立ち上がる時や、歩き始めという、動作を開始する時に痛みを感じます。また、症状が進行すると、正座や階段の昇り降りが困難になってきたり、膝に水が溜まったり、じっとしていても膝に痛みを感じるなど日常生活に支障が生じることがあります。
日常生活の注意点としては、できるだけ膝に過度な負担をかけないようにすることが大切です。そのため、和式の生活スタイルである布団からの起き上がりや正座などよりも、ベッドや椅子の使用など洋式の生活が良いとされています。
比較的強い痛みを感じる場合、早めに受診される方が多いのですが、痛みが弱いと感じるとガマンされたり、「もう歳だから膝が痛いのはしょうがない」と諦めていたりする方もおられます。受診のタイミングは人それぞれですが、膝の痛みがしばらく改善しない時や、以前より悪化していたり、痛みが強くなったり違和感があれば、受診いただいたほうが良いと思います。受診することで、痛みの原因を知るということが大切ですし、受診せずに放って置くと症状が悪化し、治療の選択肢が限られることがあるので、お気軽に専門医にご相談ください。
足底板(インソール)
痛み止めの投与やヒアルロン酸注射などの関節内注射を行い、痛みを和らげながら、リハビリで筋力トレーニングを行います。特に、太ももにある大腿四頭筋を鍛えると膝を安定させ痛みを軽減させる効果があるので、無理をしない範囲で筋力トレーニングを続けてほしいと思います。歩行時は、膝に体重の3倍以上の負荷がかかると言われているので、体重コントロールも大切です。また、O脚の方には、足底板(そくていばん)という外側が高くなっているインソールを靴に入れ、膝の内側にかかる荷重を外側に変えるようにします。早めに受診いただき治療が開始できれば治療選択肢が増えるので、それぞれの方の状態に合わせ症状の改善や進行の予防に努めます。
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