専門医インタビュー
愛知県
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「歳のせい」と諦めがちな膝や股関節の痛み。痛みには原因があり、整形外科でどのような疾患かを突き止めれば、治療の選択肢が広がります。また、最近では、低侵襲で回復の早い手術が行われているようです。名古屋医療センターの服部陽介先生に、年齢を重ねるごとに痛みが出やすい「変形性膝関節症」「変形性股関節症」の治療法について伺いました。
変形性膝関節症の方はソファから立ち上がる時や階段を降りる時が特に痛いという方が多く、また、変形性股関節症の方は、靴下や靴を履くといった股関節を深く曲げる動作で痛みが出ると訴える方が多いです。痛みが出ると鎮痛薬や湿布を使ってしばらく様子を見る方が多いと思いますが、一度は整形外科を受診して痛みの原因を知ってほしいです。
変形性膝関節症や股関節症と診断されたら、まずは、消炎鎮痛剤を使用し痛みを和らげ、膝や股関節周りの筋力トレーニングなど、一般的には手術以外の保存療法から開始します。
筋力トレーニングは関節に負担をかけないように、膝の場合は、座ったまま脚を持ち上げて太ももの前にある大腿四頭筋を鍛える訓練や、太ももの後ろにあるハムストリングを鍛えるトレーニングを行います。股関節は、横向きに寝て上にある脚を上げる運動でお尻の横にある外転筋を鍛えるのがお勧めです。外転筋を鍛えると股関節が安定して痛みの軽減だけでなく、人工股関節置換術後の脱臼予防にも役立ちます。
保存療法によって軟骨の変性を止めることはできませんが、早めに治療を開始できれば、進行をある程度抑えることが期待できます。また、治療を続けることで、痛みが軽減し、手術を回避できる方もおられます。膝や股関節に痛みがあれば、痛みの原因を知るためにまずは専門医にご相談ください。
保存療法を続けても痛みが強く、日常生活に支障を感じているのであれば、手術を検討しても良いと思います。膝も股関節の場合も、手術を受けるのは60代以上の方が多いのですが、最近はお元気なご高齢の方が増え、「自立した生活を送りたいから」と80代後半、90代でも手術を希望される方が増え、手術を受ける方の年齢が上がっていると思います。筋力が弱って足腰が悪くなってからでは手術後のADL回復に時間がかかるため、高齢になればなるほど長い間、痛みを我慢しないほうがいいと考えています。
変形性股関節症の場合は、40歳前後ぐらいから痛みが強く困っている方が多くおられます。人工関節の性能や手術方法が進化し、以前のように15~20年で再置換を行う方は少なくなりましたが、それでも若いうちに手術を受ければ再置換のリスクは高まります。そのようなリスクも十分ご理解いただいた上で、今の痛みがつづく不安や⼿術後に人工関節再置換の将来への不安より、今の痛みを改善し前向きに充実した生活ができるようになっていただきたいとお話ししています。また、早めに手術を行うことは、他の関節への悪影響を防ぐことにもなります。人工関節や手術手技が進化して再置換もしやすくなっていますから、ご本人が再置換の可能性を納得の上であれば、人工関節手術を受けることは患者さんにとって非常に有用だと思いますし、実際に若年で人工関節手術を受ける方が増えています。
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