専門医インタビュー
高齢化に伴い、変形性膝関節症や関節リウマチなど、膝の痛みで悩んでいる人が増えています。そのまま痛みを我慢していると、膝関節の軟骨がすり減ることで関節の痛み・変形などの症状が引き起こされ、歩行をはじめ日常生活に大きな支障をきたす恐れがあります。治療法には様々な方法がありますが、中でも、「痛みが和らいで歩けるようになる」、「脚がまっすぐになる」治療法として、人工関節手術が注目されています。今回は人工膝関節置換術について、中国労災病院の藤本英作人工関節センター長にお話しを伺いました。
正常な膝軟骨変形性膝関節症の軟骨
膝の痛みの原因の多くは変形性膝関節症です。変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨がすり減り、変形や関節炎を生じて、痛みが起こる病気です。正常な膝関節の軟骨は衝撃をやわらげたり関節の動きを滑らかにしますが、年をとったり無理に膝を使い続けることで軟骨がすり減ってしまいます。そしてほとんどの方が内側の軟骨がすり減ってしまい、O脚へと進行していきます。これが変形性膝関節症の原因といわれています。
変形性膝関節症には、日常生活が大きく影響しています。特に戦後間もない頃は自転車での移動が中心で、80代以上の方々はその頃から歩くことを必要として生活されていました。また、当時はトラックがまだなく、荷物を背負って歩くことで気付かないうちに膝に負担をかけてしまったこともあるでしょう。この辺りだと安芸灘の島嶼部の方々はみかんを運ぶモノレールがなかった時代に、みかんを抱えて畑を往復していたのが原因で、膝を悪くされている方がたくさんいます。しかもその症状がかなり悪いというのも特徴です。呉では、現役で農業をされていて働きすぎで膝の痛みを訴えるケースが多く、その上、O脚などの変形も強いという特徴があるように感じます。また膝が痛いと思っていたら、変形性関節症ではなくリウマチが原因だったという方もいます。
昔は膝が痛くなると受診に来られる方が多かったのですが、今では多くの方が生活に支障が出るまで我慢してしまう傾向にあるようです。最近の呉の傾向としては、子どもと離れて暮らしている年配の方が介護してもらうこともできず、このまま生活していくには膝の痛みを抱えたままでは良くない、ということに気づき受診する、というケースが増えています。この他にも、徐々に痛みが悪化したり、体力が落ちてきたりしていることから、早めに手術を受けようと受診される方も大勢いらっしゃいます。手術を受けられるのは70代の方が一番多いのですが、80歳を過ぎても介護を受けずに一人暮らしを続けるために手術を受けるというケースもあります。
変形性膝関節症のX線
やはり、いくつになっても自分の脚で歩きたいと思われる方がほとんどだと思います。その一方で、どのタイミングで病院に行けばいいのか分からないという声もよく耳にします。できることならば、軽い症状でもまずは「かかりつけ医」を受診して基礎疾患がないか診ていただくことをお勧めします。また、総合病院の医師に診てもらう場合は、これまでどのような治療をしてきて効果があったのか・効果がなかったのかということなどについても、きちんと伝えて下さい。医師も患者さんと一歩進んだ話ができるので、より良い治療法を勧めることができると思います。
治療法は大きく分けて「保存療法」と「外科的療法」があります。代表的な保存療法としては、鎮痛剤を飲んだり湿布を貼ったりする「薬物療法」があげられます。この他にもヒアルロン酸を患部に注射する「関節注射」、関節の負担を軽くする装具を使用する「装具療法」、リハビリなどの「運動療法」も行います。特に、運動をして体重を減らすことは確実性が高く非常に効果的で、プールでの水中訓練やウォーキングなどをして体重を落とすことで症状が軽減される方は多くいらっしゃいます。しかしこれらの治療で十分な効果が得られない場合には外科的療法が必要になります。
外科的療法には、膝を1cmくらい切って小指くらいの内視鏡カメラを入れて間接内を観察しながら軟骨の欠片などひっかかっているものを取り除く「関節鏡視下手術」、変形やO脚の強い方には膝のすぐ下の骨を切り、膝関節を正常な向きに変える「骨切り手術」、変形性膝関節症で軟骨が無くなった方には膝の関節面を人工のもので置き換えする「人工膝関節置換術」などがあります。手術方法は、レントゲンやMRIだけに頼るのではなく、患者さんの症状やライフスタイルなどをご本人やご家族と話し合って決めます。
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