専門医インタビュー
東京都
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人工股関節置換術を受けるときに、いつ手術を受けるのが良いのか、タイミングを決めるのはなかなか難しいものです。そこで今回は、患者さんにとって適切な手術時期を逃さないために、術後の生活に大きく影響する人工股関節(インプラント)と手術方法がどのくらい進歩しているのか、また、具体的にどのように手術が行われるのか、世田谷人工関節・脊椎クリニックの塗山正宏(とやま まさひろ)先生に教えていただきました。
特発性大腿骨内顆骨壊死と特発性大腿骨頭壊死症
膝関節に痛みが出る原因には様々な病気がありますが、最も多いのは軟骨がすり減って関節の変形が進む変形性膝関節症です。その他には、膝関節の骨や軟骨が破壊される関節リウマチや、軽い衝撃がきっかけで発生する「特発性大腿骨内顆骨壊死(とくはつせいだいたいこつないかこつえし)」という病気もあります。
同様に股関節も、変形性股関節症が大多数を占め、それ以外のものとして特発性大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)が挙げられます。また、日本人には寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)が多いのも特徴です。これは、骨盤にある大腿骨頭の受け皿となる臼蓋(きゅうがい)のかぶりが生まれつき浅く、股関節が不安定な状態になるためで、加齢により徐々に変形性股関節症へと移行し、40~50代になって痛みに悩まされるようになることが多くなります。
人工関節置換術は、変形性関節症の治療法の一つで、代表的な手術方法です。病気によってすり減ってしまった軟骨や変形してしまった骨を取り除き、人工関節(インプラント)に置き換えることで痛みが改善し、生活の質の向上を目指す手術です。膝や股関節の痛みのために、歩くことや日常生活などが思うようにできず、保存療法(日常生活の見直しや運動療法、薬物療法など)を行っても痛みが改善しない場合や、関節の変形がかなり進んでいる場合は、人工関節置換術を考えたほうが良いでしょう。
人工関節置換術を受ける具体的な時期については、痛みや変形といった症状の程度や日常生活でどのくらい不便が生じているのか、仕事の関係や年齢など様々な要素を考慮しながら、患者さんの希望に沿って決めます。以前は、人工関節の耐用年数が10~15年くらいといわれていましたので、再置換の可能性を考えると、60歳以上でないと手術に踏み切れないということがありました。しかし、現在の人工関節は性能が格段に良くなり、耐久性も20~30年以上機能することが期待されています。そのため、最近では、50歳代でも人工関節置換術を行うことが増えてきています。
膝や股関節の変形が進行していった場合、関節周りの筋肉や骨が弱くなり、歩く力が落ちていきます。それによって膝や股関節の動きがさらに悪くなるという悪循環が起こる可能性があります。関節の状態が悪ければ悪いほど、手術後の回復力が悪くなり、リハビリの期間が長期化するなど悪影響を及ぼす可能性が高くなります。
また、片方の膝や股関節だけ悪いという場合、もう片方の健康な足に負担がかかってしまいます。その状態が長期間に及ぶと、健康なほうの足まで悪くなり、気づいたら両方の膝や股関節が変形していたということも起こり得ます。さらに膝や股関節の状態が悪いと、腰にも悪影響が及びます。そのために歩行や運動が難しくなると、日常生活での運動量が少なくなり全身の健康にも良くありません。その意味でも手術を受ける時期というのはとても重要です。担当の先生とよく相談して、適切なタイミングで手術を受けることを考えたほうが良いでしょう。
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