専門医インタビュー
静岡県
プロフィールを見る
膝が痛くても年のせいだからと放置していませんか?変形性膝関節症など加齢にともない進行する疾患は、早めにご自身の膝の状態を把握することで治療の選択肢が広がります。そこで今回は、浜松赤十字病院の古橋亮典先生に痛みの原因や幅広い治療法について伺いました。
膝関節は太ももの骨とすねの骨からできています。太ももの骨は大腿骨(だいたいこつ)といって関節面は内側、外側ともに丸い形をしています。すねの骨は脛骨(けいこつ)といって関節面は平らな形をしています。丸い部分と平らな部分が合わさっただけでは、関節がぐらぐらと不安定なため、半月板(はんげつばん)や靭帯(じんたい)といった組織が周りを支えています。大腿骨と脛骨の間には軟骨(なんこつ)があり、体重がかかる時に衝撃をやわらげるクッションのような働きをします。
膝が痛くなる代表的な原因として「変形性膝関節症」(へんけいせいひざかんせつしょう)があげられます。変形性膝関節症とは、軟骨がすり減り骨同士がぶつかって変形することで痛みが生じる疾患です。主な原因として、加齢や外傷、O脚などがありますが、これらの理由に加えて、肥満であったり重労働などで膝に負担がかかっている方は、より変形しやすい環境にあるといえるでしょう。また、軟骨だけでなく半月板や靭帯が傷むことで変形性膝関節症に発展するケースもあります。
典型的な症状として、歩き出しや立った時など、体重がかかるタイミングで痛みを感じる方が多くいらっしゃいます。加齢にともなう進行性の疾患ということもあり、中高年が多いといわれています。男女差でいうとO脚が多いことや筋力が男性よりも強くないなどの関係から女性に多い疾患です。
大腿骨内顆骨壊死
「大腿骨内顆骨壊死」(だいたいこつないかこつえし)という疾患があります。血流が行き届かなくなることで骨の一部が壊死してしまい、膝の内側に痛みをともなう疾患です。まだはっきりした原因は分かっていませんが、半月板の変性断裂であったり、高齢になって骨が弱くなっているところに力が加わることで起こる軽微な骨折などが原因ではないかと考えられています。変形性膝関節症とは異なり、急激に強い痛みが生じたり、安静時や夜間時に痛みが出るのが特徴です。その他、腰椎椎間板ヘルニアなど腰の疾患が原因で膝に痛みが生じていることもあります。
一言に「膝が痛い」といっても、原因や疾患は多岐にわたります。疾患の診断に大切なのは、「痛みの出かた」です。疾患によって痛みの出かたは異なり、それぞれの症状には特徴があります。どのような時にどのような痛みがあるのか、普段の生活からご自身の膝の状態をチェックしておくとよいでしょう。
日常生活の中で痛みを感じたら早めに整形外科を受診されることをお勧めします。進行性の疾患が多いということもあり、症状が悪化してからでは、受けられる治療が限られてしまう可能性があるからです。一方で、早めに診断を受けておくことで、手術以外の方法で改善がみられたり、手術が選択肢となった場合でもより負担の少ない方法で治療を進められる可能性があります。受診をして特に問題がなかった場合でも、現在の状態をレントゲン画像などで把握しておくことで、今後症状が進行した時に進行具合を比較することが可能です。どのくらい進行したのかを客観的に知ることで納得して治療選択を行うことができるのではないでしょうか。診察では、先ほどご紹介した「痛みの出かた」を中心に問診を行い患者さんの症状や日常生活の様子を伺います。さらに触診やレントゲン検査を行い、必要に応じてCT検査やMRI検査を行います。
ヒアルロン酸注射
まずは手術以外の方法(保存療法)で改善を目指します。代表的な方法として、生活指導(減量など)、リハビリ、消炎鎮痛剤の服用、装具療法、ヒアルロン酸注射などがあります。リハビリでは患者さんの状態にあわせて主に筋力をアップさせるようなプログラムに取り組んでいただきます。装具療法では、足底板(そくていばん)といって靴の中に入れる中敷きのようなものを使っていただきます。足底板を使うことで膝の内側にかかっている体重を外側へ移動させ、膝への負担を減らし症状をやわらげる効果を期待することができます。これらの保存療法を行っても症状が改善しなかったり、重度の変形が生じている場合には手術が選択肢となります。
ページの先頭へもどる
PageTop