専門医インタビュー
福岡県
プロフィールを見る
「よっこらしょ…アレ、なんだか痛いな」。一歩踏み出した瞬間や立ち上がるときに、膝に痛みが走ることはありませんか。それは変形性膝関節症かもしれません。「年だからしょうがない」と諦めないで。治療できる病気です。原因や治療について、福岡整形外科病院の理事長・王寺享弘先生にお聞きしました。
内側型(右膝) 外側型(右膝)
日本人はO脚が多く、内側の軟骨が減る
「内側型変形性膝関節症」がほとんどで、
外側型は1割程度です
変形性膝関節症の患者数は、50歳以上で700万人、予備軍を含めると1千万人ともいわれ、毎年約90万人が発症しているという報告もあります。女性は男性の2~3倍多く、男性より筋力が弱いことなどが、その理由と考えられています。主な原因は加齢です。関節のクッションの役割を果たす軟骨は、軟骨細胞と軟骨基質に分かれています。軟骨細胞の間にある軟骨基質は、75%が水分、コラーゲン繊維が20%、残りの5%はヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などの成分です。コラーゲン繊維は、建物で言う〝鉄筋〟の役割を果たします。ヒアルロン酸やコンドロイチンは、サプリメントなどの成分で聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。ヒアルロン酸は1gあたり6000mlも水分を保持する、優れた保水力があります。この水分のおかげで、膝の関節は弾力性を保ち、歩行時の衝撃を吸収できるのです。年齢を重ねると、コラーゲンの配列が崩れ、ヒアルロン酸が減少します。それとともに水分が増えていき(ブヨブヨになり)、軟骨が摩耗してしまうのです。クッションを失った骨同士がこすれ合い、骨が削れたり変形したりして痛みが発生し、変形性膝関節症が引き起こされます。
加齢とともに、O脚も大きく影響します。日本人はO脚が多く、内側の軟骨が減りやすい「内側型変形性膝関節症」がほとんどで、外側型は1割程度です。また、半月板や靭帯(じんたい)を損傷した経験、関節の負荷を高める肥満も主な原因となります。その他の要素としては、遺伝的なものあると考えられています。
変形性膝関節症の症状 | |
---|---|
|
|
歩いているとき、膝の関節には体重の2~3倍の負荷がかかります。歩き始めや立ち上がる瞬間、階段の上り下りでは4~5倍もの負荷が掛かります。変形性膝関節症があまり進行していない初期の段階では、段差のない平地での歩行では痛みがないという人や、歩いているうちに痛くなくなる人がほとんどです。だからと言って過信は禁物です。痛みが強くなるとともに、曲げ伸ばしなど可動域が狭まり、動作に制限が出てきます。水が溜まる(水腫)こともあります。
検査の際はレントゲンで骨の状態を確認します。骨のすり減りや半月板の損傷を調べる必要があれば、MRI検査も実施します。リウマチなど、他の病気の可能性があれば血液検査・関節液検査も行います。治療は、基本的に保存療法から始めます。保存療法としては、薬物療法、装具療法、運動療法などがあげられます。
※半月板…膝関節のすき間の、内側と外側にある組織。膝関節の動きを円滑にし、 衝撃を吸収する役割を果たしています。
(1)薬物療法
(2)装具療法
(3)運動療法
大腿四頭筋など、膝関節周辺の筋肉を鍛える訓練を行います
ページの先頭へもどる
PageTop