専門医インタビュー
福岡県
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高齢者に多い「変形性膝関節症」は、膝に痛みや違和感があった場合、早めに受診することが大切といわれます。しかし受診することだけでなく、治療や手術に対して不安で、つい先延ばしにしてしまう方も少なくないようです。「治療をするかどうか、手術をうけるかどうかは別として、まずはご自分の膝の状態をしっかり把握し、進行しないためにどうすればよいかを知ることが重要です」と語る久留米大学医療センターの田渕幸祐先生に変形性膝関節症や「人工膝関節置換術」の詳細をうかがいました。
変形性膝関節症の方はもともと軽いO脚になっている方が多く、そのため膝の内側にあるクッションの役割をする半月板に負担がかかりやすくなっているのです。加齢とともに半月板の水分が失われ断裂してしまうと、さらにO脚が進行し膝の内側に痛みが出てくることがあります。症状は痛みだけでなく、膝をきちんと伸ばせなかったり、曲げるのが困難で正座ができなくなったりと「可動域制限」が起こり、進行すると日常生活にも支障が出てくることがあります。そのため少しでも膝に違和感があれば、体重管理だけでなく、膝を過度にひねる、深くしゃがみこむといった膝に負担のかかる動作をできるだけ避けることを意識しましょう。
変形性膝関節症の場合、レントゲン画像上の所見と患者さんの痛みは相関していることが多いのです。しかし中には、変形具合と痛みが相関していない方もいらっしゃり、そのような場合は半月板の損傷が痛みの原因となっていることがあります。そのような場合はMRI検査を行い、レントゲン検査では確認できない骨の中の状態や、半月板の状態などを確認し正確に痛みの原因を特定します。MRI検査によって半月板が関節の中で、めくれあがることで痛みを引き起こしているということが分かれば、変形性膝関節症の治療ではなく、半月板損傷に対する治療を行います。
膝関節は一つの大きな袋(関節包(かんせつほう))で包まれ、この関節包の内側にある滑膜(かつまく)から、関節液(滑液(かつえき))と呼ばれる、軟骨に必要な栄養や酸素を届けたり膝がスムーズに動くようにする働きがある液体が作られています。健常な膝では、関節液は作られては吸収されることを繰り返し一定の量で満たされています。しかし半月板の損傷や変性した軟骨によって滑膜に炎症が引き起こされると、通常よりも多く関節液がつくられ吸収されにくくなります。これが膝に水が溜まる状態です。ただし原因となる炎症が治まれば正常に戻るため、少しくらい水が溜まっていても特に気になる症状がなければあえて水を抜く必要はないと思います。しかし大量に水が溜まってしまい痛みが出たり、動かしにくくなるようであれば水を抜いたほうが良いでしょう。「水を抜いたら癖になる」ということを聞くことがありますが、水を抜くからではなく、水が溜まる炎症という原因があるので水が溜まるのです。
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