専門医インタビュー
中高年に多い変形性膝関節症は、一般的に徐々に進行する病気です。ところが、ケガなどで半月板を切除していたり、前十字靭帯を損傷したままだったりすると、通常よりも早く進行してしまうことがあります。そこで半月板や靭帯を温存する治療や人工膝関節置換術の種類など、最近の変形性膝関節症の治療について相川先生と岩瀬先生に詳しくお話を伺いました。
相川 中高年の膝の痛みの原因で圧倒的に多いのは変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)によるものです。この病気は、膝関節の軟骨がすり減ることで痛みや変形を生じます。軟骨がすり減る原因の多くは加齢で、年齢を重ねるとともに徐々に進行していきます。ところが、50代、60代ですでにこの病気が進行してしまっている方に多くみられるのが、若い頃に半月板(はんげつばん)を損傷して、すでに切除してしまっているケースです。半月板を損傷して膝に痛みが出ると、昔は、半月板を切除するのが一般的な治療でしたので、それに伴って変形が早く進んでいる傾向がみられるのです。
岩瀬 近年は、クッションの役割を果たしている半月板を切除してしまうと、そうでない方に比べて変形性膝関節症が早く進行してしまうことがわかってきています。そのため、若いうちからできる限り半月板を温存するという流れになっており、半月板を長く持たせるために、早期の半月板損傷に対しても積極的に治療を行っていく傾向になっています。また、中高年の膝の痛みの原因としては、急に発症することが多い大腿骨内顆骨壊死(だいたいこつないかこつえし)も見逃せません。
大腿骨内顆骨壊死
相川 最近、大腿骨内顆骨壊死も、半月板の後ろ側の付着部の断裂が関連しているといわれています。半月板は、あるべき位置にないと本来のクッション機能を十分に発揮できません。ところが、加齢によって半月板が弱っているところに、階段を1段踏み外すなどのちょっとした衝撃が加わっただけで半月板が断裂したり、傷めてしまったりすることがあります。断裂が起きると膝の後ろが“ポンッ”と鳴るような感じがして、激烈な痛みが起きます。中には、ごく短期間で変形性膝関節症が進んでしまうこともあります。
さらに、変形性膝関節症によって骨のとげが出てくると、それに押されて半月板が本来の位置から逸脱し、軟骨の摩耗が進んでしまうこともあります。骨壊死は原因不明のことも多いのですが、骨同士がぶつかり合うことで起こる微小な骨折が関係している可能性もあるので、半月板のクッション機能はとても重要なわけです。
岩瀬 骨壊死に関しては、骨粗しょう症も関係しているといわれています。閉経に伴って骨粗しょう症になりやすい40歳以降で、特に体重の重い女性はリスクが高いとされています。半月板の後ろ側の付着部の断裂や位置が逸脱している場合は、縫合したり、位置を元に戻したりという処置を関節鏡という内視鏡によって、患者さんの体に負担の少ない簡単な手術で処置しておくことが、変形性膝関節症を予防する上で重要な治療の一つになっています。さらに、若い頃にスポーツ時のケガなどで前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)を断裂し、気づかずにそのままになっているような方も、そうでない方に比べて変形性膝関節症が早く進んでしまう印象があります。前十字靭帯が断裂していると膝がカクンとぬけるような感じがするので、心当たりがある場合は、早めに整形外科を受診することをお勧めします。
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