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専門医インタビュー

年齢に関係なく股関節に痛みや違和感があれば早めに専門医に相談を

大谷 卓也 先生

東京都

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医学博士
学会の役職:日本小児整形外科学会 理事長、日本人工関節学会 理事、日本股関節学会 評議員、東日本整形災害外科学会 評議員
専門:股関節外科、小児股関節外科

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この記事の目次

股関節に痛みが生じる原因として多い変形性股関節症。股関節の形態異常である股関節形成不全が主な原因ですが、高齢者だけでなく、小中学生の時期でも股関節に痛みや違和感の出ることがあります。さまざまな治療法がありますが、「期待される効果を予想・比較し、その方に最適な手術法や時期を検討することが大切です」とおっしゃる東京慈恵会医科大学附属第三病院の大谷卓也先生に、変形性股関節症の治療を受けるタイミングやその詳細をうかがいました。

股関節の痛みの原因を教えてください。

股関節形成不全

股関節形成不全

正常な股関節

正常な股関節

股関節の痛みの原因となる疾患には、変形性股関節症、大腿骨頭壊死(だいたいこっとうえし)、大腿骨寛骨臼(だいたいこつかんこつきゅう)インピンジメントなどがあります。その中でも多いのが、股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)を基盤とした変形性股関節症で、早ければ学童期、遅い場合は60歳を過ぎてから痛みを感じることがあります。
股関節形成不全の中には、小児期に脱臼など股関節の疾患を治療した既往があり、その後の発育に伴って徐々に変形性股関節症になる方と、そういった小児期の治療経験が全くない、あくまで股関節の構造上の問題から成人後に変形性股関節症に至る方の大きく2つのタイプに分けられます。

小児の場合は、どのような股関節の痛みが受診のサインになるのでしょうか?

変形性股関節症

変形性股関節症

赤ちゃんの時期や子どもの頃に脱臼などの治療を受けている子や、その親御さんは、「いつ発症するかわからない病気を持っている」という意識があるので、定期的に受診をしている方もいるし、ちょっとでも違和感があったら、早めに受診するケースが多いと思います。
一方で、治療歴のない方は自覚がないだけに、股関節に痛みが出ること自体が「寝耳に水」で、どのタイミングで受診したらいいのか、判断に迷うかもしれません。ただ、変形性股関節症の発症時期は成人後が圧倒的に多いですが、小・中学校の学童期に発症するのは、重症例であることを意味し注意が必要です。そのため長歩きや遠足、登山のように股関節に負担がかかる時、あるいはスポーツをした時に以前はなかったような、股関節や、膝から太もも、足の付け根あたりの痛みを感じ、数日間安静にしてもあまり改善しない場合は、一度、整形外科を受診して、股関節の形に問題がないか診断してもらうのがいいと思います。診断の結果、明らかに股関節形成不全があり、それを原因に症状が出ている場合は、そのまま放置しておくと病状が進んでしまいますので、専門医とよく相談し、治療について早めに検討しておく必要があります。

変形性股関節症の治療にはどのような方法があるのでしょうか?

外転訓練

外転訓練

保存治療と手術治療があります。変形性股関節症の症状改善では、体重が適正で、筋力がしっかりあって、無理のない生活を送っている、この3つのバランスが取れていることが重要になります。保存的治療では、鎮痛剤を中心とした薬物療法や、股関節周りの筋力強化を目的とした運動療法を行います。運動療法としては、古くから脚を閉じたり広げたりする外転(がいてん)訓練が行われていますが、これはオープン・カイネクティック・チェーン(OKC)エクササイズのひとつであり、刺激したい筋肉などをピンポイントで鍛える方法を行っても、爬行(はこう)が中々改善しないこともあります。そのため、クローズド・カイネティック・チェーン(CKC)エクササイズという複数の関節や筋肉を使いながら、日常生活動作に近い状態でトレーニングしたほうが効率的です。
手術療法には、寛骨臼(骨盤側のくぼみ)骨切り術(こつきりじゅつ)、大腿骨骨切り術、あるいはそれらを組み合わせて行う「関節温存手術」と、「人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)」があります。このうち関節温存手術は、基本的に50歳以下の方が対象で、年齢や股関節の形、病状などを総合的に勘案して、どの手術法を適用するかを検討します。人工股関節置換術は、基本的に50歳以上が対象ですが、関節温存手術をした場合に期待される効果と、人工股関節にした場合の効果を予測、比較しながら、個々の患者さんに適した手術法や手術時期を検討することになります。


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