専門医インタビュー
神奈川県
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普段耳慣れない「外傷」という言葉。対象とならない限り、あまり知ることがない外傷治療ですが、外傷を負った患者とその家族には、「死んでしまう苦しみ」だけではなく、「不具を背負いながら生きていく苦しみ」も付きまといます。
このような患者さんに、「外傷による後遺障害を抱えても、あきらめずに専門医を訪ねてみては」と力強いアドバイスを送るのは、湘南鎌倉総合病院 外傷センター・センター長の土田芳彦先生。外傷の発生頻や種類、外傷の患者さんが抱えている悩みや治療法、日本の外傷体制についてまで、幅広くお話を伺いました。
外傷とは、いわゆるケガのことです。外部からの物理的あるいは化学的な要因によって、皮膚や骨、筋肉、内臓などが損傷を受けることです。熱や電流、酸やアルカリなどによるものもありますが、身近にイメージできるものとしては、交通事故に遭ったとか、スポーツで骨折したといったものがあげられます。
海外データから推測した外傷患者数
外傷の発生割合について、日本には具体的なデータがないのですが、平成20年の消防庁の統計によると、救急車が搬送した外傷患者のうち3週間以上の入院を要する傷病者は年間23万人発生しています。ただし、そのうち生命にかかわるような外傷が体の複数個所にみられる多発性外傷患者はどのくらいなのか、手術を要する整形外傷はどのくらいなのかといった損傷の状態はわかりません。
そこで、日本と交通・労働環境がよく似ているエジンバラ(英国)の病院のデータから類推してみます。これは、日本に当てはめてもほぼ妥当な数値であろうと思われます。それによると、人口1万人あたり手術を要する整形外科外傷患者は160人程度発生し、そのうちの10%程度に後遺障害が起きているといわれています。100万人都市に当てはめると16,000人の手術が行われ、その10%の1,600人は残念ながら不良な治療結果になっているということになります。
また、重度四肢外傷といって、骨が折れるだけではなく筋肉や皮膚も損傷して、救急医療、外傷整形外科、形成外科による集学的治療が必要な難症例は1万人に数人、頭部と胸部、腹部と手足など身体の複数部分に生命にかかわるような重い外傷が同時にみられる多発外傷患者は約1.5人といわれています。絶対数は決して多くはありませんが、このような酷いケガの場合は、半数以上に後遺障害が出るので深刻です。
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