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専門医インタビュー

膝の痛みは関節だけでなく筋肉の問題で起こることも多く、痛みの解決のためには原因の適切な見極めが大切です

朱 寧進 先生
  • しゅ ねい しん 先生
  • 多摩北部医療センター 整形外科 部長
  • 042-396-3811

東京都

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東京医科歯科大学医学部卒業
専門分野:下肢関節外科(人工関節・骨切り術)、関節鏡下手術、膝の痛み
資格:日本整形外科学会認定専門医、日本人工関節学会認定医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、医学博士、東京医科歯科大学臨床教授

この記事の目次

膝の痛みは、関節が悪くなっているからだと思い込んでいませんか?朱先生は、「実は、膝関節そのものだけでなく、膝関節周囲の筋肉やお皿の周りが痛みの原因になっていることが多く、レントゲンやMRI検査を受けても原因がわからずに膝が痛む場合、これが当てはまる可能性が高い」と話します。膝の痛みの原因と治療法についてお話を伺いました。

レントゲン、MRI検査で異常がないのに膝が痛むのはなぜですか?

膝まわりの筋肉

膝まわりの筋肉

膝の痛みは、膝の外側、つまり、筋肉系統が原因で起こる場合と、膝の内側、つまり、膝関節そのものが原因で起こる場合とに大きく分けられます。外側の痛みは、加齢で筋力が弱ってきた場合、歩いても筋力よりも膝への負担のほうが大きい場合などに起こります。筋肉系統が主な原因となっている場合、レントゲンやMRI検査を行っても異常が見られないのに膝痛が続くことが多くあります。

関節の外側(筋肉)が原因の膝の痛みは、多いのでしょうか?

半月板

かかりつけの先生から、「手術しか解決方法がありません」と紹介されて受診される患者さんの中にも、よく診察すると、筋肉系統が主な原因となっている膝痛の方が多くいらっしゃいます。その場合、手術が必要だと言われていても、手術をせずに膝の痛みが改善することが少なくありません。もちろん、紹介されてくる方の多くは、半月板(はんげつばん)が傷み、軟骨(なんこつ)がすり減って変形が進んでいるなど、関節内の問題も見られます。年齢を重ねれば、しばしば膝関節の変形が進んでいますが、必ずしも関節の変形だけが膝痛の原因とは限りません。筋肉系統が痛みの主な原因となっていることはとても多く、それを見逃されたままヒアルロン酸注射や手術などの関節内に対する治療を受けても、膝の痛みは改善しないことが多いのです。

筋力が落ちると、なぜ膝の痛みが起こるのでしょうか?

大腿四頭筋

大腿四頭筋

膝周りの筋肉で一番重要なのは、膝を伸ばす働きのある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)という太ももの前側の筋肉です。膝を伸ばす構造は、大腿四頭筋、膝蓋骨(しつがいこつ)(お皿)、膝蓋腱(しつがいけん)へと続いていきます。つまり膝を伸ばす構造の中心にある膝蓋骨(お皿)の上下には軟らかいもの(筋肉、腱)が硬いもの(骨)へつながる部分があり、力学的に弱い性質があります。したがって大腿四頭筋の筋力が落ちると、相対的に膝を伸ばす構造への負担が増え、膝蓋骨(お皿)の周りに痛みを感じることとなります。膝蓋骨(お皿)の周りを押すことで、痛みを確認することができます。膝蓋骨(お皿)の周りの痛みをそのままにしておくと、さらに筋力が落ち、痛みも増すという悪循環に陥ってしまいます。

筋肉が膝痛の原因となっている場合、どんな治療法がありますか?

筋肉系統が痛みの原因になっている場合、ご自分で筋トレやストレッチ、マッサージをすることで改善できます。筋肉系統の膝痛を改善する有効な方法として3つのことをお勧めします。1つは、大腿四頭筋の筋力トレーニングです。両足を伸ばしたまま、片足ずつ、かかとが浮かないように、膝の裏側を床につけ、太ももが盛り上がるように力を入れ、5秒間保ったら力を抜きます。これを10回繰り返しましょう(図1)。2つめは、膝のお皿周りのマッサージやストレッチです。お皿の周りで押したときに痛むところを、両手の親指を重ねて当てお皿が動くように5秒間押し、力を抜きます。お皿が全周性に良く動くことを確認してください(図2)。3つめは、膝が痛むときはなるべく歩かないことです。膝が痛くても歩くことは可能です。しかし筋力が十分でない状態で歩くことは、痛みの原因になっているお皿の周りにとっての繰り返し運動となり、筋肉系統の痛みを悪化させる恐れがあります。

図1 膝可動

図1 膝可動
5秒間×10回
太ももが盛り上がるように力を入れる

図2 痛点ストレッチ

図2 痛点ストレッチ
5秒間×朝晩3分間
膝蓋骨を5秒間押し、力を抜く


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