専門医インタビュー
長崎県
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中高年の女性をはじめとして、多くの方が股関節の痛みに悩みを抱えていると耳にします。変形性股関節症を含む様々な疾患に対する治療法、人工股関節置換術のタイミングなどについて、増田整形外科 院長の土井口 祐一 先生にお話をお聞きしました。
変形性股関節症の進行
歩行時や安静にしている時でも股関節に痛みが出てくるようであれば、一度整形外科を受診した方がいいですね。痛みの度合いは個人差があるので一概には言えませんが、気になる痛みは我慢せずに一度専門医に相談した方がいいでしょう。
股関節の痛みとなる疾患にはさまざまなものがありますが、通常はレントゲンを撮って股関節の状態を確認します。
しかし、レントゲンでは骨以外の情報は把握しにくく、レントゲンでは異常が認められない場合、超音波(エコー)を効果的に使用し検査を行うこともあります。膝関節と違って股関節は体表から深い場所にあるので、水が溜まって腫れがあっても見たり触ったりして分かりにくいのです。そのため、超音波でじっくり観察しレントゲンでは発見できない水腫などがないか確認します。痛みが強く、早く痛みを取ってほしいという場合は、超音波で股関節の位置を確認しながら痛み止めの注射を行うこともあります。
それでも原因が分からない場合はMRIを行います。
変形性股関節症のレントゲン
最も多いのは、変形性股関節症です。変形性股関節症には、原因がはっきりしない一次性のものと原因がはっきりしている二次性のものがあります。近年では、高齢化社会の影響か一次性の変形性股関節症も増えてきているのですが、日本人の場合は、二次性が圧倒的に多く、その原因の多くは臼蓋形成不全とよばれる骨盤の形態異常です。臼蓋形成不全は、股関節にある大腿骨(ふとももの骨)の骨頭と呼ばれる部分を覆う骨盤側の臼蓋の被りが通常よりも浅くなっている状態です。被りが浅いために、荷重が限られた場所に集中しやすく、大腿骨頭と臼蓋の軟骨がすり減り骨同士が変形し痛みが出る状態です。
若い方で股関節が痛くなる原因はその他に大腿骨頭壊死やリウマチによる股関節疾患などがありますが、近年FAI(Femoroacetabular Impingement) という概念が股関節痛の原因としてトピックスにもなっています。また転倒していないのに痛くて歩けないという高齢の方が時々いらっしゃいますが、その中には、骨粗しょう症や腰椎の後弯変形をベースにした大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折という微弱な骨折を起こしている場合もあります。
このように股関節の痛みの原因となる疾患はたくさんありますので、自己判断せずに整形外科で診断をしてもらい、ご自身の状態を把握しその症状に合わせた適切なアドバイスをもらいましょう。
寛骨臼回転骨切り術
股関節には体重の何倍もの負荷がかかっているので、まずは、体重をできるだけ増やさないことが大切になります。そのほかに痛みがある場合は、消炎鎮痛剤などの痛み止めを服用したり、股関節周りの筋肉を鍛えることも重要です。しかし間違った自己流の運動方法や負荷のかけかたが適切でないと、かえって股関節を痛め、よけいに痛みが強くなる場合があります。そのため専門の理学療法士から、適切なトレーニング方法を指導してもらい、自宅でも継続的に続けていってもらいたいと思います。外出時などは股関節の負担を軽減させるため、できるだけ杖を使用することもお勧めです。最近ではノルディックウォーキングも注目されています。ただしこのような治療を続けても思ったほど痛みが改善せず、夜寝ている時にも痛みが出るなど生活に支障が出てくるようであれば、手術を検討したほうが良いと思いますが、手術をするかしないかは患者さん自身が決めることになります。
変形性股関節症がまだ初期の段階で年齢が50歳くらいまでの方の場合、寛骨臼回転骨切り術といって、骨盤側の骨の位置をずらし臼蓋のかぶりを大きくし股関節にかかる負担を軽減する方法があります。また進行期や末期の場合、痛んだ股関節を金属やポリエチレンでできた人工のものに置き換える人工股関節置換術が適応になりますが、50歳未満の若い方の場合には薬物療法やジグリング(貧乏ゆすり)などのリハビリなどを行い手術に至るまでの年数をかせぐこともあります。また、自由診療となりますが、再生医療(APS療法)も行われるようになっています。
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