専門医インタビュー
東京都
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膝の痛みの原因はさまざまです。早期に治療を受けることで痛みを軽減し、自分の足で歩ける生活が手に入ることで人生はより豊かになります。ご自身も毎日3~4km歩き、患者さんにも歩くことを推奨している荻窪病院の森山一郎先生に、中高年に多い変形性膝関節症の原因や治療法について詳しく伺いました。
膝関節は、体重を支えている関節の一つであるため、平坦な道を歩くだけで体重の2~3倍の負荷がかかっていると言われています。大まかに言うと、立つ、座る、歩くといった動作のたびに膝関節内で起こる摩擦や衝撃を減らすために、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の表面は弾力のある軟骨で覆われ、さらに、大腿骨と脛骨の間にある半月板が膝関節にかかる荷重を分散しています。
ところが、半月板の損傷や逸脱により、クッションのような役割を果たす“フープ機能”が損なわれると、膝関節への荷重が分散されず、軟骨に荷重が集中してしまいます。すると軟骨の変性や摩耗が進み、やがて骨同士がぶつかり合って痛みや変形が生じます。このように膝関節に変形や痛みが起こるのが変形性膝関節症で、中高年の膝痛の原因の大半を占めています。
また、変形性膝関節症になりやすい要因としては、若いときにケガで半月板を傷め手術をしたことがある、重労働で膝への負担が重い、O脚変形、肥満などが考えられます。
膝関節のMRI画像
半月板は、スポーツなどによる外傷(ケガ)による損傷だけでなく、加齢によって変性し、関節の外にはみ出す“逸脱”という状態が起こることがあります。半月板の逸脱が起きているときの自覚症状は、一般的な変形性膝関節症とあまり変わりません。例えば、「歩き始めるときに痛む」、「膝の痛みで長時間歩けない」、「階段昇降で、特に、降りるときに痛みがつらい」といった症状が見られます。半月板がわずかに逸脱している程度のときにMRIでその状態が早期発見できれば、保存療法から治療を開始します。
保存療法はヒアルロン酸注射や、リハビリとして大腿四頭筋訓練などの運動療法、電気治療などの物理療法が有効です。ところが、半月板が完全に逸脱し、軟骨がすり減り、骨髄浮腫も見られるような状態になると手術療法が必要になります。
変形性膝関節症の
レントゲン
レントゲンで膝の関節軟骨のすり減りや変形が確認でき、変形性膝関節症と診断されたものの、「ときどき膝が痛い」、「痛くなり始めた」という初期の段階であれば、進行を遅らせる観点からも歩くことが大切です。それは、あまり歩く習慣のない方は膝関節を支える大腿四頭筋などの筋力が弱くなり、中高年になって代謝が落ちて体重も増えると、ますます膝への負担が大きくなるからです。
そのため運動療法として毎日3~4kmのウォーキングをすることをお勧めしています。歩くときには、靴底が硬い靴で長時間歩くと膝への衝撃が大きく、膝痛の原因になるので、日常的に歩くのに問題ないクッション性のよい市販のスポーツシューズがよいと思います。その他に、水泳なども効果的です。膝痛が始まったときの運動の仕方にはコツがあり、シューズや種目を変えただけで痛みがかなり楽になるケースも少なくありません。医学的な根拠に基づいたアドバイスが痛みの改善につながることもありますので、ぜひ整形外科を受診することをお勧めします。
変形性膝関節症の保存療法としては、ヒアルロン酸注射や運動療法の他に、眠れないほど痛みが強いときには痛み止め薬の服用、その他、外用剤や足底板などによる装具療法があります。これらの治療が効かず、膝の痛みが3か月以上続いており、レントゲン上も軟骨の摩耗や変形が見られる場合は、次の選択肢として手術療法があります。変形性膝関節症の手術には、骨切り術と人工膝関節置換術と大きく2つの方法があります。
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