専門医インタビュー
広島県
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股関節の痛みには、さまざまな原因と対処方法があります。「そのうち改善するだろう」とついつい受診を億劫に感じて先延ばしにされる方も少なくないようですが「早めの受診のほうが、お困りの症状に合わせた治療の選択肢が広がりますよ」と語るのは山崎琢磨先生。股関節の痛みの原因や、症状によってどんな治療があるのか、股関節鏡手術、骨切り術、人工股関節置換術などさまざまな手術方法についても詳しく伺いました。
大腿骨寛骨臼インピンジメント
股関節の痛みには、さまざまな原因があります。レントゲンやMRI
などで見つけられるものもあれば、画像診断でも判明しにくいものもあります。原因が骨や軟骨にある場合もあれば、股関節周囲の軟部組織(靭帯や筋肉、腱など骨以外の組織)に原因があるケースもあります。そのため、どこがどのように痛いのか、また痛みのためにどれくらい困っているかをしっかりと先生に伝え、診察を受けることが大切です。股関節の痛みで最も多いのが「変形性股関節症」です。股関節は、太ももの骨(大腿骨)の頭部にある骨頭とよばれるボール状の骨が、骨盤側のお椀の形をした寛骨臼(かんこつきゅう)にはまり込むような構造になっています。その屋根の部分の被りが浅い「寛骨臼形成不全」が「変形性股関節症」の約8割を占めます。被りが浅いので十分な支持力を保ちにくいため、関節唇という寛骨臼の被りを広げる役目をする部分に過度に負担がかかり、関節唇や軟骨がすり減って痛んでしまいます。原因は遺伝や成長過程で生じた骨盤の形態異常が多く、女性に多い傾向もあります。また、「大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)」という、大腿骨頭がきれいな球体ではなく、歪んだ形になっているために股関節が動く時に、きれいに回らず関節内の組織を痛める病態があります。
これは成長過程で発生することが多いようですし、ケガやスポーツ外傷などの原因や、加齢によって起こることもあります。
変形性股関節症のレントゲン
変形性股関節症の場合、あまり股関節に負荷をかけないことが重要です。過度な運動や重い荷物を持つことは避けると同時に、靭帯や筋肉など患部の周りの組織に支えてもらえるよう、筋力トレーニングやストレッチなどを行ったり、姿勢を見直したり、杖を補助的に使うなどを行って、患部に負担が集中しないような働きかけも重要ですね。
寛骨臼回転骨切り術
股関節に痛みを訴え来院される方がほとんどですが、変形などがかなり進む前にできるだけ早目に受診したほうが治療方法の選択肢が多いと思います。痛みのために日常生活などで支障が出ており、外来での治療も効果がなく早期にそれを改善したいという場合、手術という選択肢を考えます。手術方法には、「股関節鏡手術」、「骨切り術」と「人工股関節置換術」などがあります。
「股関節鏡手術」は、皮膚に小さな穴をあけて、股関節内の病変部を手術するもので、ご本人の組織をできるだけ温存して使う場合に適した手術です。筋肉に与えるダメージも少なく、回復も早いというのが特長です。長期的視野で股関節を抜本的に改善したほうが良い場合は、寛骨臼の矯正を行い軟骨への負荷の軽減を図る「骨切り術」や、関節自体を人工のものに置き替える「人工股関節置換術」を行う必要があります。「骨切り術」と「人工股関節置換術」のどちらを選ぶかという判断基準としては、骨盤と大腿骨のクッションの役割をしている関節唇や軟骨などの組織がある程度保たれている場合は「骨切り術」、痛みの程度がかなり強い場合、組織が痛んでしまいその修復も難しいという場合は「人工股関節置換術」が適しています。
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