専門医インタビュー
千葉県
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ロコモティブシンドローム(運動器症候群)が進行すると、寝たきりや要介護状態を招いてしまうといわれています。股関節痛もロコモを引き起こす重大な要因の一つだと話す岸田先生に、ロコモとは何か、そのチェック法や股関節痛を引き起こす変形性股関節症の治療について伺いました。
正常な股関節(左)と寛骨臼形成不全(右)
日本人で一番多い股関節の痛みは、寛骨臼形成不全が原因となっておこる変形性股関節症です。寛骨臼形成不全は、大腿骨(太もも)の骨頭がはまり込む骨盤の屋根の部分が浅いために股関節に痛みが生じ、特に日本人女性に多くみられます。ご自身が寛骨臼形成不全だとご存知ない場合、股関節のあたりに抜けるような感覚や違和感がある、足が疲れやすい、歩き始めなど何か動作を始めるときやしゃがみ込むと痛いといった自覚症状で寛骨臼形成不全に気づくことがあります。
変形性股関節症が進んでくると、じっとしていても股関節が痛い、就寝中に痛みで目覚める、寝返りを打つと痛くて起きてしまうといったことが起こります。このときにレントゲンを撮ると、股関節の軟骨がすり減り骨と骨の間に隙間がなくなっていたり、変形が見られたりすることがあります。
※平成25年厚生労働省
国民生活基礎調査より
通称「ロコモ」と呼ばれているロコモティブシンドロームは、2007年に日本整形外科学会が提唱した概念で、運動器の機能障害が起き、立って歩くという移動がしづらくなっている状態のことをいいます。ロコモが進行すると、寝たきりなど介護が必要になるリスクが高まることから、ロコモと判定された人は、“寝たきり予備軍”とみることもできるわけです。
例えば、スポーツのやりすぎや運動器のケガ、膝痛や腰痛の放置、運動器の疾患(骨粗しょう症、変形性関節症、変形性脊椎症)の発症は、ロコモの大きな要因です。ただ、ロコモ自体は病気という考え方ではありませんが、結果的にそれによって歩くのが大変な状態ならロコモに該当するのです。
立ち上がりテスト
ロコモパンフレット(公益社団法人
日本整形外科学会)より抜粋
日本整形外科学会では、ホームページやパンフレットを通じて、ロコモかどうかを自分で調べることができる簡単な「ロコモ度テスト」を提唱しています。ロコモ度テストは、「①立ち上がりテスト、「②ツーステップテスト、「③ロコモ25(アンケート)の3つのテストで構成されています。
① 立ち上がりテストでは、片足または両足で決まった高さから立ち上がれるかどうかで程度を判定します。最初に40cmの高さの台から反動をつけずに立ち上がれるかどうかをテストするのですが、40cmというのは一般的な洋式トイレの座面の高さです。そこから自力で立ち上がってズボンを上げることができるかどうか、要介護のリスクをはかる観点から40cmと定めています。
ツーステップテスト
ロコモパンフレット(公益社団法人 日本整形外科学会)
より抜粋
② ツーステップテストでは歩幅を測定し、下肢の筋力・バランス能力・柔軟性などを含めて歩行能力を確認します。歩幅と歩くスピードとは相関があるといわれ、歩くスピードが遅くなっているのは、歩幅が狭くなっているためです。そうなるのは足の筋肉の衰えが関係していると考えられるわけです。
さらに、③ロコモ25というアンケートで最近1か月間の体の痛みや日常生活で困ったこと、外出が億劫になったなどの心理的な状況を確認します。この3つのテストの結果を総合してロコモ度を判定します。ちなみに、ロコモ度1は、移動機能の低下が始まっている状態。ロコモ度2は、移動機能の低下が進行している状態です。
股関節というのは、上半身を骨盤のところで支えている重要な関節です。その股関節に痛みがあると日常生活にかなり支障が出て、中には、股関節痛のために外出や旅行を控えたり、仕事に支障が出てしまったりしている人もいます。しかも、股関節痛が膝や腰に悪影響を及ぼし、膝痛や腰痛を引き起こし、さらに歩く機能に支障が出ることもあります。ロコモ予防には、股関節はもちろんのこと、足(下肢)全体、体全体で考えることが大切です。
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