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専門医インタビュー

高齢期を痛みと共に過ごすのはつらいもの。違和感は早めに相談を

宮城県

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日本整形外科学会、日本股関節学会(評議員)、日本小児股関節学会(評議員)東北整形災害外科学会所属。整形外科専門医

この記事の目次

足の付け根の辺りが痛み、動きが制限される、左右の脚の長さが違っている気がする…。中高年女性の中には、そんな股関節にまつわる悩みを抱える人が少なくないとか。
人工股関節置換術は、変形性股関節症や関節リウマチといった股関節の疾患治療のために、日本で年間約5万件行われているポピュラーな手術法です。今回は、松田病院 東北股関節疾患センターの藤井玄二先生に股関節の痛みの原因や治療法についてお話を伺いました。

脚の付け根や腰、太ももなどが痛くて動きづらくなる病気の一つとして耳にする変形性股関節症とは、どんな病気か教えてください。

股関節周辺に違和感があるとき、股関節そのものの病気を患っている人は案外少数です。股関節の病気だと思って来院する人もいますが、実際、来院者のうち約99%は「腰椎疾患」、子宮筋腫・卵巣脳腫などの「婦人科疾患」や「鼠径ヘルニア」などです。残りの1~2%程度が、股関節の軟骨が擦り減ったり変形したりする「変形性股関節症」によるものです。
変形性股関節症を引き起こす主な原因の一つは、股関節が浅いこと(寛骨形成不全)です。特に日本人は大腿骨の上にある寛骨臼(かんこつきゅう)という部分が生まれつき浅い人が多く、股関節に不調をきたしやすい傾向があります。さらに女性は出産に対応して骨盤の内側が広くなっているため、片足にかかる力が体重の約3.1倍と男性以上に股関節への負担が大きく、変形性股関節症になりやすいといわれています。患者さんの90%は女性で、妊娠・出産・育児やホルモンバランスの変化などを契機として病気が進行します。
また、幼少時に「股関節脱臼」を患った既往歴のある人、家族に股関節脱臼を患った人がいる場合も、変形性股関節症になるリスクが高いといわれています。過去の治療が終了していても、それは初期治療が終了したということ。身体の構造上、不具合を起こしやすいことに変わりはないので、注意しましょう。これは私の経験上ですが、小柄で内股な体型の人ほど、変形性股関節症になりやすい傾向もあると思います。
欧米人にも変形性股関節症はありますが、それは65歳以上で加齢が原因で関節の老化によることがほとんどです。若くしてこの不調に悩むのは日本独自の傾向といえます。

脚の付け根や腰などに違和感を覚えた場合、どんな症状を目安に受診したらいいのでしょうか。

股関節に痛みを感じる以外にも、足の爪を切る体勢がつらい、靴下が履けない、台所仕事など30分以上立ち続けるのが大変、階段の上り下りに手すりが必要、しゃがんだり立ったりするのがつらい、車の乗り降りが大変といった日常生活が困難な場合は、股関節に異常がある可能性があるため専門医を受診したほうがいいでしょう。変形がひどくなると、このような症状がより顕著になります。
ただ、若い人で変形が軽度の場合は、違和感があっても症状がはっきりしないことがほとんどです。股関節の異常か、別の部分の異常かを自分で見分けるのは非常に難しいため、違和感があるならお近くの整形外科を受診してください。そこから専門医を紹介してもらい、診断・治療方針を決めてもらうのがいいでしょう。
逆にご高齢の患者さんの中には、痛みを感じていても医師の診断を受けようとしない人もいます。このような方々は、股関節が悪いのは分かっていても、「手術が怖い」と我慢してしまうようです。手術への不安を完全に解消する方法はありませんが、身近な方が手術をして歩けるようになったり、旅行に行けるようになった、もっと早く手術をすればよかったという声を聞くことで、後押しになることもあります。


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