専門医インタビュー
富山県
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女性に圧倒的に多いといわれている変形性股関節症。人工関節センターを立ち上げ、さらに、患者さんの負担が少ないだけでなく、脱臼のリスク低減や股関節の安定性を図る手術手技で患者満足度の向上に取り組んでいる坂越先生は、「手術のタイミングを逃さないでほしい」と話します。変形性股関節症の原因や症状、治療について伺いました。
正常 寛骨臼形成不全
股関節の痛みの原因となるもので、最も多いのは変形性股関節症です。その他にも、大腿骨頭壊死や関節リウマチといった病気、骨折などの外傷が原因で股関節が痛むこともあります。
変形性股関節症は、「臼蓋形成不全」がある人が発症することが非常に多い疾患です。臼蓋形成不全は、生まれつき股関節の屋根にあたる部分の形状が小さすぎるなどの形態不全で、そこに体重の負荷が集中することで股関節が変形し、中高年になって変形性股関節症を発症することが多いといわれています。臼蓋形成不全は、日本では女性に非常に多いことから、変形性股関節症も圧倒的に女性に多くみられます。当院でも変形性股関節症の約9割は女性の患者さんです。
健康な股関節をレントゲン画像で見ると、大腿骨頭はきれいな丸い形をしていて、骨盤の関節の隙間もきれいに見えます。ところが、変形性股関節症になると、真ん丸だった骨頭が少し扁平になってきて、骨盤の関節の隙間も変形が進むほど狭くなっていきます。最終的には、本来の場所に大腿骨頭が収まらず、亜脱臼といって脱臼しそうな状態になってしまいます。
症状は、変形性股関節症のステージや進行度合いによって個人差がありますが、多くの場合、初期は、立ち上がるときに太ももの付け根のあたりにだけ痛みが出始めます。進行するにつれて、一歩一歩、歩く度に痛みだし、やがて股関節が拘縮し、動かしにくくなってしまうと、変形性股関節症の末期の状態といっていいでしょう。
股関節に痛みはあるけれども、レントゲンなど画像検査で目立った変化が見られないような状態は、医学的には変形性股関節症の「前期」にあたります。この時期は、肥満の方には体重コントロールをしてもらい、痛み止めなどの薬物療法や股関節周囲の筋力トレーニングなどの「保存的治療」を行います。前期を過ぎると、「初期」、「進行期」、「末期」とステージが進み、進行期、末期になると、人工股関節置換術を考えたほうがよい段階になります。
また、40代くらいの比較的若年で、進行ステージが前期から初期にある場合、関節温存手術を勧めることがあります。
ただ、関節温存手術は、骨を切って股関節の機能改善を図るため、患者さんの体への負担が人工股関節置換術よりも大きいというデメリットがあります。当然、入院期間も人工股関節の場合よりも長くなります。若い人だと子育てや仕事など社会的役割も大きいので、最近は、関節温存手術の出番はずいぶん減ってきて、代わりに初期の段階であっても人工股関節置換術を選択する若い人が増えてきている印象があります。近年、人工関節の手術数が急増している背景には、もちろん、高齢者の増加という大きな要因はありますが、人工関節を選択する人の年齢層が拡大しているということも言えるのではないかと思います。
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