専門医インタビュー
山形県
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高齢者の多くが悩まされている膝の痛み。でも忍耐強い日本人の国民性によるものか、痛みを我慢して日常生活を続け、さらに症状を悪化させてしまう方もいらっしゃいます。
膝の痛みと向き合い、どう治療すればいいのかを山形徳洲会病院の大沼寧先生に伺いました。
軟骨がなくなり骨が露出した膝内部
膝の骨の表面は軟骨で覆われていて、骨同士が直接触れ合わないのが本来の姿ですが、金属疲労のように加齢とともに軟骨はすり減っていくと、その周囲に炎症が生じ痛みを伴うようになります。これが「変形性膝関節症」で、膝の痛みの大半がこの病気に起因します。
変形性膝関節症の主な原因は、加齢が一番です。機械が錆びついていくように、年をとることによって関節が痛んできます。他には、肥満で運動不足の場合です。筋力が衰えて自分の体重を支えることができなくなると、関節への負荷が大きくなります。あとは遺伝的に関節のつくりが弱い方もいらっしゃいます。変形膝関節症は男性より女性に多く、国内の患者数は約700万人に達しています。一方で、歳だからと諦めていたり、痛みを我慢したりしている患者さんが多いのもこの病気の特徴です。
また、日本人は膝の内側がすり減ってくる内側型の変形が多く、全体の90%ほどを占めます。地域性といえるのか、山形でも農家の方で膝の内側がすり減ってきてO脚になっている人が多いですね。田植えやさくらんぼの収穫時期は患者さんが少なくなります。農家の方は痛くても仕事をやらざるを得ないからか、都市部の方より変形が激しいように感じます。欧米人は内側型が75~70%ぐらい、他にも外側型もおり、変形のタイプで日本と異なっています。
一時的な痛みではなく、数週間も痛みが継続する場合には、お近くの病院に相談して下さい。また、日常生活に制限がでるくらいなら病院に行った方が良いでしょう。具体的には、階段の昇り降りに手すりが必要だとか、降りるのが怖いなどです。また平地を歩いていても10分ぐらいで痛くて立ち止まってしまい、近場へ買い物に行っても、すぐ立ち止まって休みが必要になるなどです。これでは生活に大きな支障をきたします。病院で診てもらってアドバイスをもらうとか、診断して問題が無いと分かれば、安心することができるでしょう。
変形性股関節症のX線
膝に疾患があると診断された場合、はじめはダイエットや筋力トレーニングなどの保存療法で、原因となる肥満や筋力不足の解消を目指します。足に合っていない靴などが原因となっている場合が案外多く、とにかく原因と思われるファクターを一つひとつ潰していきます。
保存療法には、ダイエットや筋力トレーニングなど、いろいろなものがありますが、正しいやり方で行うのは難しく、そこが問題です。正しく行うためには、専門の理学療法士や専門医がいる病院で、20~30分かけて指導してもらい、さらにそれを継続して行わなければなりません。例えば、1年継続して正しい方法で行ったとしても、ご自身の膝は一生使い続けるわけですから、正しい方法も日常的に一生続けなければなりません。習慣化するには専門の人間から教わり、励ましてもらうなどの環境が必要だと思います。
人工関節置換術は最終的な手段になります。保存療法をいろいろやったあげく、改善がみられない時や、症状が深刻になった場合に適用になります。概ね、初回の診療で改善の見込みがある場合は3カ月ほど保存療法で様子を見ます。半年みる場合もありますが、酷い症状の場合はすぐに手術を勧めます。特に、寝ている時に痛みで目が覚めて不眠になるとか、痛み止めを毎日飲んで、飲み薬じゃ効かなくて座薬を使っている人には、すぐに手術を勧めます。
手術を行うタイミングは一概には言えませんが、手術を行わないと命にかかわるわけでもありませんので、手術を受けるかどうかの判断は、保存療法を続けて経過をみてから良いと思います。
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