専門医インタビュー
愛知県
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中高年以降に多い「膝の痛み」。その原因は、膝関節が担っている役割や構造が深く関係しています。ご自身も学生時代にラグビーによる怪我で入院を繰り返した経験から、患者の立場に立った医療を心掛け、患者の病態に応じた治療を提案されています。膝・肩・スポーツ障害を専門に、小児から高齢者まで幅広い年齢の患者さんや、トップアスリートの膝の靭帯損傷・半月板損傷・骨軟骨損傷・膝蓋骨脱臼に対しては関節鏡を用い、変形性膝関節症に対しては骨切りや人工関節を積極的に手がける重工大須病院の黒河内和俊先生に、膝の痛みの原因と治療法、受診のポイントについて伺いました。
膝の構造
膝は、私たちの体の関節の中で最も大きな負荷がかかっている関節です。平地の歩行で体重の2~4倍、階段の昇降で体重の4~7倍、走ると10倍以上もの負荷が膝にかかるといわれています。膝関節は、主に大腿骨、脛骨、膝蓋骨の3つの骨で作られており、運動機能を担うために非常に複雑で不安定な構造をしているため、安定化させるために骨と骨をつなぐ靭帯、膝への衝撃を吸収する軟骨や半月板、筋肉などが発達しています。「膝の痛み」には、こうした膝の役割と構造が深く関わっているため、奥が深く、様々な原因によって起こるのです。中高年以降の人に限って言うと、「膝の痛み」の原因で多いのは、半月板や軟骨損傷、骨折、滑膜の炎症、そして、最も多いものが変形性膝関節症ですが、膝に強い痛みが生じる原因疾患としてぜひ知っておいていただきたいのが「骨壊死」です。
骨壊死のMRI画像
「骨壊死」は、膝関節で軟骨を支える軟骨下骨が死んでしまう(壊死する)病気です。様々な原因で軟骨下骨に微細な骨折が起こり、栄養が行き届かなくなるために骨が壊死してしまうと考えられています。最近、骨壊死を引き起こしている主な原因として、半月板損傷が関与しているということが話題になっています。半月板損傷というと、スポーツをしている人に多い外傷と考えている人が多いかもしれません。ところが、半月板は加齢に伴って変性するため、50代以降になると、階段昇降や急なしゃがみ込みといった日常生活の動作でも内側の半月板損傷が起こりやすくなります。やや活動性の高い中高年で、O脚の傾向があり、体重が重い人などが受傷しやすい膝のトラブルといえます。半月板損傷は、MRIを撮らなければ正確に診断できません。膝がひどく痛いのに、レントゲンでは膝の変形があまり強くないという場合は、膝の専門医に診てもらいMRI検査を受けることをおすすめします。「骨壊死」にまで至る前に、早めに診断してもらい、早期に治療を開始したほうが良いでしょう。
骨切り術のX線画像
比較的若い患者では一般的に「骨切り術」を行います。場合によっては壊死している箇所に骨軟骨の移植を追加します。「骨切り術」とは、脛骨の一部を切って膝の形をX脚に変え、膝の外側に体重が乗るようにすることで内側に生じる痛みを改善します。つまり、膝の外側の軟骨が良くなければできません。また、高齢で骨がすでに脆くなっていたり、壊死の範囲が大きい場合には、「骨切り術」で治すことはできず、人工膝関節置換術を行うことになります。特に、人工膝関節置換術の中でも、悪いところだけを部分的に置き換える「人工膝関節部分置換術」は、「骨切り術」よりも早く日常生活に復帰できるというメリットがあります。ただし、人工膝関節には耐用年数があります。近年は技術の進歩によって耐用年数が格段に長くなっていますが、その人の活動量や体重などによっても左右されますので、手術を検討された場合は膝の専門医とよく相談された方が良いでしょう。
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