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専門医インタビュー

股関節の痛み、違和感や不具合は早めに股関節の専門医に相談を

神奈川県

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慶應義塾大学医学部卒業。同大整形外科に入局。川崎市立川崎病院、独立行政法人国立病院機構東京医療センター、済生会宇都宮病院、慶應義塾大学病院、などを経て平成25年4月から当院に

この記事の目次

脚の付け根付近が痛い、何か違和感がある。 このごろ動かせる範囲が減ったようだ・・・。多くの中高年の女性たちが抱えている股関節の悩みに「股関節は、年齢や症状の程度、骨の角度などによって、この先どうなるかを予測することができる関節です」と語る、済生会横浜市東部病院の股関節専門医である、船山敦先生に、股関節の症状に関するお話を伺いました。

股関節やその周辺が痛くて動きづらい、その原因となる疾患にはどんなものがありますか?

脚の付け根が痛い、違和感がある、脚を動かせる範囲が減った・・・。中高年の女性が抱える股関節の悩みの90%以上が、股関節が変形する「変形性股関節症」が原因です。そして、残りの5%程度が「大腿骨頭壊死症」という、大腿骨頭の一部が血流の低下によって壊死を起こす病気です。関節リウマチやSLE(全身性エリテマトーデス)などの治療のためにステロイド薬を注射、もしくは内服を続けていることで起こりやすくなります。
「変形性股関節症」のほとんどは「臼蓋(きゅうがい)形成不全」が原因で発症します。股関節には、臼蓋という受け皿のような部分があり、大腿骨の先端の骨頭が臼蓋に納まるように構成されています。この臼蓋の形状が小さすぎるなど不完全なために、股関節に痛みを生じるのが「臼蓋形成不全」です。「臼蓋形成不全」は臼蓋の形成が不完全なために、大腿骨側の軟骨に摩擦が生じて軟骨が磨り減ります。その結果、股関節が変形して炎症が起きてしまうのです。自分が「臼蓋形成不全」であることに気づかずに年齢を重ね、中高年になって痛みがでる場合が多いです。

加齢に伴って、あるいは体重が重いほど、関節に負担がかかって軟骨が減りやすくなります。股関節のトラブルの中で外国人に圧倒的に多いのは原因が明らかでない一次性股関節症ですが、日本人は先天性股関節脱臼や形成不全、あるいは外傷や炎症の結果引き起こされる二次性股関節症が断然多いのです。しかも、その原因の80%くらいが臼蓋形成不全だといわれています。 生まれつき「臼蓋形成不全」があると小さな子どもは股関節脱臼を起こしやすいので、日本では、生後4カ月の検診で股関節の状態を調べることになっています。形成不全をそのままにしていると、17~20歳くらいになって股関節の痛みや亜脱臼などの症状が出てきますから、そのときに骨切り術といって、股関節のすぐ上の骨盤を切って関節の可動性を広げる手術を行うこともあります。しかし、それほどひどい症状ではないまま年齢を重ねてきた結果、いよいよ関節の変形が強くなって、痛みが出てくるケースが多いと思います。

日本人に臼蓋形成不全が多いのは、おむつの形にあるともいわれています。今のような股を広げて当てるおむつと違って、真っ直ぐな布で足を伸ばしてあてていた時代がありました。股関節は生後4カ月くらいまでにできあがるので、ももの外側から常に押し付けられている状態でいると、股関節の角度が浅くなってしまいます。日本のある年齢以上の人たちに、この股関節の形成不全が多いといわれているのは、こういう背景があるからでしょう。今のようなおむつが主流を占めるようになって、股関節の形成不全は激減しています。従って今後は、高齢者の「変形性股関節症」は減ってくるかもしれません。

「変形性股関節症」かもしれない股関節の異常は、どんな症状から始まるのでしょうか?

「変形性股関節症」の特徴は、例えば、起き上がり時や立ち上がり時、歩き始めなど、動作に伴って太ももの前か横に痛みが出るのが特徴です。安静にしていても痛いのは、関節の変形が始まっている可能性があります。関節がボキボキと音を出したり、寝ていても痛いのはかなり重症で、関節の変形が始まっている可能性があります。関節をおさめる臼蓋は、1度程度の微妙な角度が重要になります。レントゲンで、臼蓋の角度を専門医が診れば、今の段階でこのくらいの角度なら、5年後、15年後にはこうなるという予測もできます。 痛みが生じる部位は太ももの前か横で、後ろ側にはほとんどでません。もし臀部の痛みがあれば、それは坐骨神経痛を疑います。股関節の周りが左右同じように痛む場合もありますが、どちらか片方の場合もあります。あるいは1年くらいの違いでもう片方が痛くなることもあります。最初に痛みを感じた時に、鎮痛剤を処方されて様子を見ているだけでなく、股関節の専門医に痛みの原因を調べてもらうことが大事です。まず整形外科を受診してください。

関節の変形はどのくらいのスピードで進行するのでしょうか。

変形性股関節症のX線

関節の変形はだいたい2年くらいで起こります。関節の上下に、ふつうは3~4ミリの厚さがある軟骨が、2年で、早ければ1年でゼロになることもあります。痛みは、はじめの3カ月くらいは強く感じますが、その痛みはじきにおさまってしまいます。でも、軟骨の摩耗や関節の変形は止まりません。はじめの段階で、状態を正しく診てもらうことが重要なのです。じっとして歩かなければ軟骨の減少は止まるかもしれませんが、日常生活をしている限り、軟骨は必ず減っていきます。
なお、痛みがでているのに「運動した方がいい」「筋肉をつければいい」と運動する人がいますが、運動すれば多かれ少なかれ軟骨に負荷がかかるので、残された軟骨がどんどん減ってしまいます。痛いときは安静にして、活動を下げることです。股関節の痛みを我慢して動いていると、誰が見てもバランスを失った歩き方になります。軟骨が減り、変形したほうの足が短くなるのです。そして、ますます歩き方が変になり、膝や腰などほかの部分に余計な負担がかかって、傷んでくるでしょう。30歳で形成不全が分かったけれど、40年間我慢し続け、受診した時には悪いほうの足が3センチも短くなっていた人もいます。


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