専門医インタビュー
愛知県
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“大手術” のイメージを持つ人も多い人工股関節置換術ですが、実際は、「手術の翌日にはスタスタ歩ける人も多い」と話すのは、名古屋整形外科人工関節クリニック院長の北村伸二先生。股関節の痛みの原因とともに、技術の進歩に伴って身近になっている人工股関節置換術についてうかがいました。
臼蓋形成不全
股関節の痛みは、鼠径部と呼ばれる太ももの付け根の奥のほうに感じることが多く、人によっては、太ももの前側に放散するような痛みを感じることもあります。
日本人の股関節の痛みの原因で最も多いのは、変形性股関節症です。痛み方は、股関節の変形度合によってかなり違います。普通に歩く分にはそれほど痛くないけれど、動き始めるときや負担がかかったときに痛むようなら、変形性股関節症の初期の可能性があります。
特に日本人女性は、変形性股関節症になりやすいといわれています。
股関節というのは、骨盤にお椀の形をした「臼蓋(寛骨臼)」があり、それが受け皿になって球の形をした「大腿骨頭」がはまり込む構造になっています。
日本人女性には、生まれつき受け皿が小さい「臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)」の人が多いのです。日本人の変形性股関節症の95%近くは、この「臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)」が原因となり発症しています。
では、なぜ受け皿が小さいと変形性股関節症になりやすいのかというと、球の部分である大腿骨頭がしっかり覆われていないからです。
正常な股関節では、骨頭の約4/5が臼蓋(寛骨臼)に包み込まれ、関節が安定しています。ところが、臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)では、骨頭の半分くらいしか覆われていないので、体重を受ける面積が狭いだけでなく、グラグラしやすい。このような股関節の不安定性があると、「関節唇」といって臼蓋(寛骨臼)のふちを覆って股関節を安定させ、衝撃を吸収する役目のある軟骨組織が傷み、剥がれてしまいます。
この状態を「股関節唇損傷」といって、変形性股関節症の原因の一つといわれています。
FAI(股関節インピンジメント症候群)
股関節の痛みは、中高年以降の人に限らず若い人にも起こります。特に臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)の人に起こる最初の股関節の痛みは、股関節唇損傷であることが多いのです。
若い人の股関節唇損傷の多くは、突然、ビリっとした痛みが起こります。股関節を覆っている関節包という袋の中に水が溜まると関節を曲げにくくなり、痛みを伴うこともあります。
ただし、股関節唇損傷があまり進まなければ、一時的な症状だけで治まり、整形外科の受診にまで至らないことが少なくありません。
そのため、若い頃に一時期、股関節に痛みがあったけれど、その後は症状がなく、中年以降、股関節がすり減り始め、痛みが続くようになって初めて整形外科を受診するという方もいます。
また、FAI(股関節インピンジメント症候群)と呼ばれる状態も、将来、変形性股関節症を引き起こすことがあります。
FAIは、大腿骨頭部分のくびれがあまりなく出っ張っているとか、臼蓋(寛骨臼)が大きすぎて骨頭をカバーし過ぎてしまうというように、生まれつきの股関節の骨の形状が影響し起こります。骨頭や大腿骨頚部、と臼蓋(寛骨臼)がぶつかり合って股関節唇が壊れたり、股関節の軟骨がすり減ったりしてしまうので痛みが生じるのです。
変形性股関節症(両側高位脱臼)のレントゲン
高齢化社会にともない、昔はなかった病態も出てきています。高齢の方特有の病態で、最大の原因は骨粗しょう症。
骨がもろくなり、背骨の圧迫骨折や軟骨の潰れによって腰が曲がってしまうと骨盤が後ろに倒れ、その状態で体重がかかり続けることで臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)と同じ形になってしまうために起こります。
加齢によって骨の質も悪くなっているので進行が早く、ひどくなると「急速破壊性股関節症」といって、大腿骨頭が崩れるように無くなってしまうことがあります。
また、アルコールの摂り過ぎやステロイド剤の多用による影響で、骨に血液が行かなくなり、大腿骨骨頭の組織が壊死し、やがて潰れてしまう「大腿骨頭壊死症」という病気もあります。
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