専門医インタビュー
奈良県
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股関節の痛みは、他の部位の痛みとして訴えられるケースもあり、肝心の股関節の治療に到達しないまま症状が進行してしまうことも少なくないといわれています。「治療を受けても改善しない腰やお尻、太ももなどの痛みに悩まされている人は、股関節に問題があるのかもしれません。一度股関節の専門医を訪ねて、正確な診断を早くつけてもらうことが何よりも大切です」とアドバイスする西の京病院の内藤浩平先生にお話を伺いました。
正常な股関節と臼蓋形成不全
原因として一番多いのは「変形性股関節症」です。これは、股関節の軟骨が摩耗することで徐々に股関節が変形していく病気で、変形が進行するにつれて痛みが強くなり、日常生活に支障をきたすようになります。欧米人では過体重による股関節への過度な負荷が原因で変形していくケースが多いのですが、日本人の場合は、股関節の屋根にあたる「臼蓋」が狭く、「大腿骨頭」の被覆が少ない「臼蓋形成不全」の女性が多く、それが大きな発症要因となっています。歳を重ねるにつれて痛みが現れ、徐々に悪化していくことが多いようです。受診される年代には二つの山があり、被覆が少ない人は50代で、比較的被覆が多い人では70代での受診が多く見られます。女性に多く、痩せている人でも発症するのが日本人の特徴といえます。
変形性股関節症のレントゲン
変形性股関節症による痛みを腰やお尻、太ももの痛みとして訴える人もあり、また変形性股関節症によって骨格のバランスが崩れることで腰や膝の変形が進み、その痛みの方が股関節痛よりも強く出るケースもあります。そのために正確な診断が遅れ、症状が進行してしまうことも少なくありません。長く通院しても腰やお尻、脚などの痛みが改善されない場合は、1度股関節の専門医がいる医療機関を受診してみてはいかがでしょう。変形性股関節症と診断がついたケースでも、必ず股関節から治療を始めるわけではありません。どの部位から治療を始めるのが患者さんにとってよりメリットが大きいかをよく考えたうえで、股関節より腰や膝の治療を優先する場合もあります。
また、股関節の変形があまり進んでいないのに強い痛みを感じる場合は、大腿骨頭壊死症や関節唇損傷といった疾患が隠れていることもありますので、MRI撮影でより詳しい検査を行った方が良いでしょう。
人工股関節の一例
変形や痛みが比較的軽い場合は、股関節周囲の筋力トレーニングを行います。関節に負担のかからない水中ウォーキングなどが効果的です。理学療法士に筋力評価を受け指導してもらうのもお勧めです。進行を完全に止めることはできませんが、進行を遅らせたり、症状を改善させることは可能です。
しかし、関節の変形がかなり進み、強い痛みで日常生活や仕事に支障をきたしているようであれば、「人工股関節置換術」を検討することになります。
ここで特に重要なのは、ご本人がどのような生活スタイルを望んでいるかということです。「手術は怖いから、痛みを我慢してでもなるべく先に延ばしたい」というのもひとつの考えです。しかし、「もっとアクティブな生活を送りたい」「引きこもって家族に負担をかけたくない」「元気に仕事を続けたい」という人には、人工股関節置換術は、除痛効果が高く長期成績の良いとても有効な手術だと思います。
以前は15年~20年といわれていた人工股関節の耐久年数ですが、近年の材質やデザインの飛躍的な進化を考えると、今後は30年以上の耐久性が望めるのではないかと思います。そのため、当院では50代の手術も適応としています。また、全身状態に問題がなければ、特に年齢の上限は設けていません。私が人工股関節置換術を行った最高齢は89歳です。
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