専門医インタビュー
東京都
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日本で、変形性膝関節症の患者さんはおよそ2400 万人いるといわれています。そのうち痛みがあるのは800 万人、きちんと治療を受けているのはその20%程度なのだそうです。そんな変形性膝関節症とどう向き合っていけばいいのか、高齢者にとって避けられない骨粗しょう症との関係は?東京慈恵会医科大学 整形外科学講座・主任教授の斎藤 充 先生にお話を伺いました。
変形性膝関節症のX線
壮年期以降の男女の膝の痛みの原因の多くは、変形性膝関節症です。この疾患は、はじめのうちは立ったり座ったりする時や、階段の昇降時などに膝が痛くなりますが、ひどくなってくると平地を歩いていても痛くなります。
でも、痛みの感じ方は人によってそれぞれ違いますから、同じ程度の痛さでも平然としている人もいれば、怖くてしょうがないと病院に駆け込む人もいます。
ほかにも膝痛の影には、骨の腫瘍などの重大な疾患が隠れている場合もあります。膝の周囲の痛みが、腰からくる坐骨神経痛の場合もあります。
まずは詳しいレントゲン検査で関節に異常はないかを確認することが大事です。膝痛の原因がどこにあるのかを総合的に判断するのです。
そして、変形性膝関節症だと診断が付いたら、痛みの程度と関節の変形具合を見ながら、初期か、中期か、進行期なのか、かなり進んだ末期なのかなど、関節の状態がどの段階にあるのかを判断したうえで、どのような治療を行っていくかを考えます。
レントゲンでの画像所見では関節の異常は軽度で痛みも持続的でなければ、痛みを取るための飲み薬、貼り薬、生活指導と筋力トレーニングなどを指導します。痛みが軽くならない場合は、ヒアルロン酸の関節内注射を行います。強い痛みには、関節内にステロイドの注射をすることもあります。しかし、注射をしても、痛みが軽くなるのが2日間程度で、また痛みが悪化するような場合は、いたずらに注射を継続することはよくありません。その場合には、変形性膝関節症の症状はかなり進んでいると思われます。
変形性膝関節症の中期から進行期で関節変形が見られても、軟骨がまだ残っていて、レントゲンでも関節のすきまが見えて写っていれば、できるだけ痛み止めの内服薬や注射治療といった保存療法で経過をみていきます。
この際、骨粗鬆症もある患者さんは、膝の痛みを増強することがあることがわかってきました。このためこうした患者さんでは、関節の治療と同時に骨粗鬆症の治療も行うことで痛みの改善が期待できます。
私どもは骨粗鬆症の検査(骨密度測定、骨質マーカー測定)に基づく治療計画をたて、骨粗鬆症や関節症の治療を行っています。こうした治療を継続しても、痛みが強く、膝のO 脚変形などの障害がある場合には、次のステップである人工膝関節置換術を考えます。
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