専門医インタビュー
岡山県
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最近では、最小侵襲手術(さいしょうしんしゅうしゅじゅつ=MIS)による人工関節手術が増えています。今回は、特に股関節のMISについて先生のお話を伺いました。
股関節が痛く、夜も疼いて眠れないという方や、脚長差があるために腰やひざまでが痛くなった方などが多いと思われます。人工関節の性能は向上してきていますし、年をとって動けなくなってから手術するよりも、体力的に余力のある比較的若い間に手術を受けて、痛みを取ったりやわらげたりしたいと思われる50~60歳代の患者さんが、以前に比べて増えてきているように思います。
MISとは、最小侵襲手術(さいしょうしんしゅうしゅじゅつ)のこと。皮膚だけでなく筋肉などの切離をできるだけ最小に抑える手術法です。皮膚の切開の大きさで比較すると、従来の人工股関節手術では15~20cmほど切っていたのに比べ、MISによる人工股関節手術では8~10cmほどで済みます。
また、単に皮膚の切開が小さいだけではなく、筋肉などの切離も最小に抑えることが、MISの本質です。そうすることで、手術後の痛みを少なくし、早期回復につなげることが期待されるのです。
個人差がありますが、皮膚や筋肉の切離が少なければ、手術後に感じる痛みが、従来の手術の場合より抑えられます。痛みが少なければ、一般的に言って、早期にリハビリが始められ、退院や社会復帰を早めることが可能になります。また、高齢の患者さんは、大きな切開を行う手術では、年齢的・体力的な面から手術後の回復に時間がかかることが多いので、従来の手術より切開部分の少ないMISは、高齢者にとっても、手術の負担を軽くすることができます。これらのことがMISの大きなメリットです。さらに、切開が小さいことは、合併症を起こす可能性を下げることにもつながります。
手術後の経過には個人差はありますし、リハビリの方法にもよりますが、手術の翌日から歩行訓練ができる場合もあります。手術後の痛みは多少あるものの動かすのが苦になるほどではないということも少なくありません。中にはほとんど痛みを感じないという方もいらっしゃるようです。また、手術後、早期に自分でトイレに行けることを喜ばれる方は多いようです。以前は、手術後1週間以上ベッドの上で用を足さないといけないことも少なくありませんでしたから、患者さんの精神面でも大きなメリットですね。
年齢や体格、股関節の損傷の度合いなどのさまざまな要因によって、手術時の視野が限られるMISによる手術よりも、大きめに切開して確実な視野が得られる手術を行う方が良いと判断される場合があります。その場合でも、必要最小限の切開を心がけることで、それぞれの患者さんにとって、体への負担を極力少なくして手術を行うことが可能になります。
個人差がありますが、一般に、70~80代の女性の方にはMISが有効だと考えられます。大きな切開を行う手術では、年齢的・体力的に手術後の回復に時間が必要となるためです。最小限の切開で人工股関節手術を行えば、ご高齢の女性でも早期回復が期待できる場合が多いでしょう。また、一般に、お仕事をされている方など、できるだけ早く復帰したい方にも有効と考えられます。
ただし、人工関節の再置換手術や以前に股関節の手術を受けたことがある場合は、MISによる手術は難しいですね。
人工関節の手術後は、退院後、日常生活の中で負荷がかかるような動きをしていないか、問題が起きていないかなど、定期的に担当医師に診てもらう必要があります。したがって、退院後、体力的、経済的にも無理なく定期的に通院できるかどうかも、事前によくご検討ください。
定期健診の頻度は医師の判断や患者さんの状態によって異なりますが、多くの場合は年に1回ほどです。ご自身についてどうかは、必ず担当の医師にご確認ください。
遠方の病院に通うには、体力的な負担がかかることもありますし、交通費の負担などもありますから、無理なく通える範囲内であるかをよくご検討ください。検討の結果、通院は大丈夫と思われれば、信頼できる遠方の病院で手術を受けても良いでしょう。
股関節の痛みや、手術を受けることへの不安に悩まれる患者さんは多いですが、人工関節の手術を受けた後、痛みがほとんどなくなることで、日常生活動作(にちじょうせいかつどうさ)に支障がなくなり、日々の生活をより楽しめるようになる方も少なくないようです。
最終的に判断するのは患者さんご自身です。人工股関節手術は、股関節の痛みをなくす、軽減することが最大の目的であり、MISはその手法のひとつです。実際には、患者さんの骨形態・状態はさまざまですので、MISによる手術を選択すべきでないこともあります。ご本人が安心して手術を受けられることが第一ですから、安心できる病院で、信頼できる医師に手術をしてもらうと良いでしょう。
※治療内容や効果は個人によって異なります。患者さんの個々の症状にあわせた治療法については、担当の先生と十分に相談・確認して決定されることをお勧めします。
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