専門医インタビュー
東京都
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放っておくと歩行が困難になることもある変形性股関節症。
日本人は限界まで痛みに耐えることがよくあり、受診するまで時間がかかってしまいます。人工股関節置換術を受けた患者さんからは「出来なかったことが出来るようになった」とよく言われます。日常生活に支障をきたすような辛い痛みを取り除くお手伝いすることが喜びという、北里大学 北里研究所病院 副院長、整形外科部長、総合スポーツ医学センター長 金子博徳先生にお話を伺いました。
変形性股関節症は、股関節のクッションの役割を果たす軟骨がすり減って痛みが出る病気です。欧米では、加齢などが原因で軟骨がすり減る1次性が9割を占めますが、日本人の場合は、生まれつき股関節の構造に問題がある先天性股関節脱臼や先天性臼蓋形成不全が原因の2次性のものが約9割を占めます。先天性臼蓋形成不全は遺伝性の要因もあると言われており、完全になくなることはありません。しかし、小児健診の普及などによって先天性股関節脱臼が少なくなってきていることで2次性の割合が減少し、体格や生活様式の欧米化に伴って1次性が増えている傾向があります。
来院される方の中には、じっとしていても痛いという重症の方もいますが、歩行時の痛み、股関節周囲を動かしたときの痛みを訴えていらっしゃる方が大半です。左右の脚の長さの違いから跛行など歩容の悪さも現れます。坐骨神経痛と間違えられることも多く、また腰や膝の痛みに惑わされて股関節が原因の痛みだと診断されるまで遠回りしてしまう方もいます。
日本人の傾向として非常に我慢強い傾向があり、痛みが我慢の限度を超えるまで来院しない方が多くいらっしゃいます。程度が軽い場合は、投薬や理学運動療法といった保存的療法を施しますが、症状が重く、痛みが継続し日常生活に困難をきたす場合には、治療の主流は人工股関節置換術になります。
人工股関節置換術は年間約5万件も行われている手術で、成功率も高く、周知度も高まってきた結果、今では50代の患者さんでも手術を希望される方が増えてきました。「こんなに楽になるのなら、もっと早く手術しておけばよかった」という手術を受けた患者さんの体験談や、手術の正しい情報が容易に得られるようになったことも手伝って、迷っている患者さんの背中を押してくれているようです。
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